林田紀音夫全句集拾読 305
野口 裕
震度7未明の手足まだ緩み
ヘリコプター浮遊体感余震生み
平成七年、未発表句。
まず、前項の補足。発表句では、「余震の夜へ枕木を踏み人の列」(平成八年「花曜」)と姿を変える。
あのときの当方の住んでいる地域の震度は5弱。震度7がどの程度なのかは想像の域を出ない。しかし、この二句を読むと、手足の緩みや浮遊体感は、急激な上下動がまさに「足が地に着かない」感覚を引き起こしたのだと分かる。発表句ではと読み返してみたが、浮遊体感は体感余震となるが、
体感余震暫くは海切切と
体感余震火と水を使うとき
水の来ている午前体感余震の辻
体感余震たびたび死者の翳を踏み(以上、平成八年「花曜」)
と、その時の余韻を引いてはいるが微妙に異なる。海程発表句にこの語が登場しないのも、特徴的である。
またヘリコプターも、「ヘリコプター凶器余震と共に来る」(平成八年「花曜」)となって、とらえ方は相当に異なってくる。
一瞬にして起こった異常体験を、体感を伴って句に定着させることは紀音夫ほどの技量を持ってしても至難の業であるのだろう。
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2014-03-02
林田紀音夫全句集拾読 305 野口裕
Posted by wh at 0:03
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