〔今週号の表紙〕
第367号 神田川
近 恵
22年近く神田川の側に住んでいました。そうです。小さな石鹸がかたかた鳴っちゃうあの神田川です。
家の近くの流れは大雨が降るとすぐ増水し、地下に巨大な雨水管が出来るまでは何度か冠水も目の当たりにしました。それでも川沿いには桜が咲いたり、鴨が呑気に泳いでいたり、橋の下には蝙蝠が住んでいたり、遊歩道があったりと、大概はいたって長閑に流れています。
神田川は井の頭公園を水源とし、三鷹、杉並、中野、新宿、豊島、文京区を経て、台東区の柳橋と両国橋の間で隅田川に合流する25キロ弱の中小河川で、その間に140以上の人が渡れる橋が架かっています。しかも東京都内を横断する川の中で暗渠になっているところがないという、都内では実に稀な川です。
件の写真の鯉幟は、高田馬場から雑司ヶ谷へ歩いている途中、神高橋と高塚橋の間を泳いでいました。撮影は上流の神高橋から。
竜門という滝を登り切った鯉は龍になれるという中国のいわゆる登竜門伝説から、男の子の立身出世を願い鯉の吹き流しを立てるようになったのが鯉幟のはじまりのようです。ですからここはやはり川を上ってくれなくちゃ。
でも、この鯉幟、川下からの東風に吹かれて神田川を下ってます。しかも一斉に先を争うかのように。これでは『鯉のぼり』ではなく『鯉くだり』ではないですか。
そんなことを思いつつ神田川沿いを歩いていた春も終わりかけの一日。
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