2014-07-06

【八田木枯の一句】金魚死にその日のうちに捨てられし 西村麒麟

【八田木枯の一句】
金魚死にその日のうちに捨てられし

西村麒麟


僕が最後に飼っていた生き物は金魚で、あれは小学生の頃だから二十年は前の事だ。真赤な、ぷりっと太った愛らしい金魚は、当時の僕にはとても誇らしく、毎朝餌をあげるのを楽しみにしていた。金魚は僕と僕の家族から、何年も何年も愛され続けた。

金魚死にその日のうちに捨てられし  八田木枯(『鏡騒』)

命あるものはいつか死んでしまうものだけれど、金魚の死にっぷりと言うのは、それはそれは無惨で恐ろしい。あの美しい金魚が変色し、ひっくり返り、ぷかぷかと浮かびながら恨めしい顔をして口を開けたり閉じたり、ふわーりふわりと瀕死の状態で何日か浮かび続けた。怖くて怖くて、僕は水槽に近付く事すらできなかった。

ある日僕が小学校から戻ると、水槽の中が綺麗に片付けられていた。

僕は今でも金魚が好きだ。しかし、二度と飼わない。

 

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