絵葉書の片すみに 小 津 夜 景
こゑふたつの主題による月に吠える
「地面の底の病気の顔」より
地の面にかほのあらはれ竹の秋
「竹」より
青竹にほそき毛のある寒さかな
「亀」より
ひらきゆく手のあり亀のゐたところ
「殺人事件」より
まつさをの血のながれゆく目なりけり
「かなしい遠景」より
薄暮よりきのこの影のひろがりぬ
「蛙の死」より
月の夜に帽子の下にかほがある
「春夜」より
春の夜のみなもいちめん髪となり
「およぐひと」より
ひとの目は釣り鐘になる音をききぬ
「恋を恋する人」より
空色のやうな袋をはめてみる
「見しらぬ犬」より
名をしらぬ犬と吹かれてゐる風に
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