2014-08-31

10句作品テクスト 小津夜景 絵葉書の片すみに



絵葉書の片すみに
   こゑふたつの主題による月に吠える

 「地面の底の病気の顔」より
地の面にかほのあらはれ竹の秋
 「竹」より
青竹にほそき毛のある寒さかな
 「亀」より
ひらきゆく手のあり亀のゐたところ
 「殺人事件」より
まつさをの血のながれゆく目なりけり
 「かなしい遠景」より
薄暮よりきのこの影のひろがりぬ
 「蛙の死」より
月の夜に帽子の下にかほがある
 「春夜」より
春の夜のみなもいちめん髪となり
 「およぐひと」より
ひとの目は釣り鐘になる音をききぬ
 「恋を恋する人」より
空色のやうな袋をはめてみる
 「見しらぬ犬」より
名をしらぬ犬と吹かれてゐる風に

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