【週俳4月の俳句を読む】
目のつけどころが
ふけとしこ
戦争にいろんな事情九条葱 西原天気
って……確かにいろんな事情があって戦争になるわけですが、九条葱もこう書かれると葱よりも九条のところに目が吸い寄せられてしまいます。それが作者の狙いであったとしても。いろんな事情の中に「やってみたい」などという理由が含まれていないことを祈るばかりです。声高に語る人、呟く人、ただ思っている人、様々でしょうが、多くの人が漠然と感じていることなのです。戦争に近づいている、或いは近づかせたい人たちがいるのではないかと……。軽く言って見せていますが、内容は決して軽いものではありません。
街ぢゆうにネヂ軋ませて家具の恋 同
家具の恋という発想に驚きます。と言いながら私の頭の中はネジたちでいっぱいです。むしろネジの恋と言いたいほどに。もしもネジが家具から抜け出して思い思いに相手を見付けて、ということになれば、街はどんなことになるでしょう。誰か絵に描いて見せてくれませんか、と言いたくなります。でもネジが軋むような恋をして、この家具達は傷つくことはないのでしょうか。そういえばこの句には季語がないのですね。花も咲かない、鳥の声もない、そんな街を思って不安にもなりますが、それでも面白い。家具という物が色々な想像や勘繰りを誘うからでしょう。妙に好きな作品です。
姫女苑ごまかしながら連れてくる 北大路翼
正直な句かも知れないな、と思います。ごまかしているのは何? とまずは気になるところではありますが。花は恋の場面での小道具としては欠かせないものでしょう。この一連の作品の中では私はこの句に惹かれました。ヒメジョオンは素朴で可憐な花ですが、字だけを見ると姫と女の二つの重なりが強い故に意味が出過ぎてしまうようにも思えます。他のシーンの花たちもどう働いているのかなと思いながら読みました。「見たことがない苧環が誕生花」は少々正直過ぎましたか。
腕組みのポケット歪む花見かな 阪西敦子
田楽の跡の皿掻く串の先 同
爪切りて手の皺新た百千鳥 同
目のつけどころが○○でしょ、というコピーがありましたが、まさにそれですね。腕組みによる上着の皴、それがポケットの端を持ち上げることになり、歪んでしまうわけですが、こう言われることで却って仕立ての良さを思わせたりもします。花見でこんな句が生まれるのか……ととても面白く読みました。
2句目、3句目も同様に視点のずれが成せるもの。目の働きを信じればまだまだ詠めることは多いとつくづく思ったことでした。手の皴など決して嬉しいものではありませんが、百千鳥を配されると、背後が明るくなって素敵です。
第415号2015年4月5日
■北大路翼 花の記憶 12句 ≫読む
■外山一機 捜龍譚 純情編 10句 ≫読む
■阪西敦子 届いて 10句 ≫読む
第416号 2015年4月12日
■西原天気 戦 争 10句 ≫読む
2015-05-17
【週俳4月の俳句を読む】目のつけどころが ふけとしこ
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