【週俳4月の俳句を読む】
クールでアツい
笹木くろえ
近づくほどにブラジャーは紫陽花だな 北大路翼
胸の豊かなお嬢さんに近づいていくところ。ゴージャスなレース仕立てのブラがブラウスから透けて見えている。紫陽花ですからね、間違いなく大きいよね(癪)。
冗談はさておき、対象物からぐっと引いてクールに詠んでいる印象の作品群だ。ここでも「あ、彼女がいた、大好きだ」ではなく、冷徹にレースのブラを描写している。
葛の花小さき車窓に顔二つ 北大路翼
こんなに密着している二人なのに、心が離れていると感じるのは葛の花の効果。
それぞれ浮気していて、お互いそれを知っていそうである。クローズアップで二人の表情が見たい。
春灯の届いてをりぬ庭の椅子 阪西敦子
昼間は賑わっていた庭なのだろう。もう、こんな時間になっていたのか…。春の宵の気だるく色っぽい雰囲気の中に、寂しさが見える。
作品集の題は『届いて』。自分の思いが誰かに届いてほしい、という作者の願いが込められているように感じる。
血管の眠りて桜色となる 阪西敦子
血管は青く見えるが、花の頃は桜色になるのかもしれない。もしかしたら、これは桜の精の眠りなのか。見てはいけないものを見たような。
ぼく しってるよ。 さいごのカギって どこかのほこらにあるんだよね?
奥の座敷は
六尺屏風
覗きませうよ
縁ぢやもの 外山一機
ゲームのセリフから、都々逸調の作品を紡ぎだす想像力・創造力に驚かされる。
古今東西、余計な好奇心の持ち主は、まず命を落とす運命にあるようだ。覗こうと誘われても、応じてはいけない。
トリオ・ロス・パンチョス春を待つ心 西原天気
べサメ・ムーチョの人たち。原稿を書くにあたり、何曲か改めて聴いてみたが、記憶よりもっと哀愁を帯びた、熱っぽい歌・演奏だった。これは、アツいよー。照明を暗くしたダンスホールで踊る男女など、連想してしまった。
春を待つ、が絶妙だと思う。
第415号2015年4月5日
■北大路翼 花の記憶 12句 ≫読む
■外山一機 捜龍譚 純情編 10句 ≫読む
■阪西敦子 届いて 10句 ≫読む
第416号 2015年4月12日
■西原天気 戦 争 10句 ≫読む
2015-05-10
【週俳4月の俳句を読む】クールでアツい 笹木くろえ
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