2015-06-28

自由律俳句を読む 99 矢野錆助〔1〕馬場古戸暢

自由律俳句を読む 99
矢野錆助〔1〕

馬場古戸暢



矢野錆助(やのさびすけ、1975-)は、随句誌『草原』編集同人。以下では、自由律俳句誌『蘭鋳』(雲庵、2014)より数句を選んで鑑賞したい。

俯いて小便の泡  矢野錆助

男性ならではの句。最近では便器が汚れるのを防ぐために、座ってする人も多いとか。時代はこうして変わって行くのである。

今日も居ったな守宮  同

この守宮と会えなくなる日が、いつかどうしてもやってくるのだろう。その時にはじめて、これまでの日常が幸せだったと気づくのだろう。たぶん。

オケラ鳴く夜の借金の話  同

オケラが鳴くということを、この句ではじめて知った。作者は借金をした側か、金を貸した側か。いずれもどうにもいやな夜だ。

観音様の前で蚊をうつ
  同

蚊をうつ句は多くあろうし、蚊あるいは蝿と仏様を詠んだ句も散見されよう。しかし掲題の句のシンプルさは、どうしても採りたくなってしまう。

舌絡み合って熱帯夜  同

視覚と聴覚、嗅覚、臭覚、触覚、そして味覚にまで、影響を及ぼしてしまう一句。

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