〔今週号の表紙〕
第429号 古座の海
有川澄宏
「古座」という地名に惹かれて、以前、なんども通った海辺です。
まだ寝台特急「紀伊」が走っていたから、70年代か80年代の初め頃(1984年廃止)。ずいぶん昔のことです。東京駅を夜9時に出て、那智勝浦に朝7時に着く。夜明けに車掌さんが起こしに来てくれ、なにかと車窓のガイドなどしてくれました。高度成長の真っ只中だった筈ですが、人心にまだ余裕があったのでしょうか。
勝浦で鈍行に乗り換え、小さな古座駅で降りる。通勤・通学の人で結構賑わっていました。私がカメラに入れ込んでいた頃なので、ホームから撮り始め、待合室の誰彼を構わずフイルムに焼き付け、民宿に着くまでにコダックのトライXを2、3本は使い切ってしまいました。プロもアマも画質をガサガサに荒らした写真が主流だったころ。わたしも同調していましたが、この古座の写真はあまり荒らしていません。手前両脇のコンクリートの堤防の質感を、細かく出した方が効果的と判断しての処理だったのでしょう。
沖に見える島影は、たぶん串本大島。
私がカメラを構えている地面・堤防・砂浜・海の順序を、座敷・障子・濡れ縁・庭と置き換えるイメージが湧きましたが、すこし無理でしょうか。
とりあえずは「白南風」という爽やかな季語など浮かべて頂ければ幸いです。
「古座町」は、2005年に隣の串本町に合併され、現在は「串本町古座」となっています。
淋しいですが、串本町東とか北とかにならなかったのが幸いです。
ついでと言っては失礼ですが、あの明石家さんまさんが生まれた町です。
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