後記 ● 福田若之
『週刊俳句』の後記に書くことではないかもしれないですが、『スピカ』に連載中の大塚凱「めぐる車輪のそのあとに」の一人称のぶれがすごく興味深い。基本的には「ぼく」なのだけど、ちょっとだけ「おれ」がでてくることがあって、昨日、とうとう「私」が登場しました。
おそらく、どれが本当の大塚凱、ということもないのでしょう。 どれも、まぎれもなく彼の書いた言葉であると同時に、どれも彼の自意識そのままというわけにはいかないだろうから。
9月19日分のカニカマの話。彼が以前にカニカマについて話してくれたことがとても面白かったので、このあいだ会ったときに「あれ書いて!」と頼んだら、ほんとに書いてくれました。
何がありがたいって、書かれた言葉は引用できるってことです。というわけで、さっそく引用してしまおう――
カニカマは決定的に食感が人工的だ。蟹には及ばない。だからここには、カニカマが蟹に近づけば近づくほど、カニカマは蟹たりえぬという矛盾が聳えている。このカニカマのモデルを使って、きっといろんなことを考えられる。模倣、再現、隠喩、そして書くこと。
……カニカマと差異?
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それではまた、次の日曜日、お会いしましょう。
no.439/2015-9-20 profile
■きくちきみえ きくち・きみえ
昭和32年6月26日・神奈川県生まれ
平成13年「やぶれ傘」入会 大崎紀夫に師事
句集『港の鴉』
■小野裕三 おの・ゆうぞう
1968 年、大分県生まれ。神奈川県在住。「海程」所属、「豆の木」同人。現代俳句協会評論賞、現代俳句協会新人賞佳作、新潮新人賞(評論部門)最終候補など。句 集に『メキシコ料理店』(角川書店)、共著に『現代の俳人101』(金子兜太編・新書館)、『超新撰21』(邑書林)。サイト「ono-deluxe」
■久留島元 くるしま・はじめ
1985年1月11日生。「船団」会員。第七回鬼貫青春俳句大賞受賞。2012年~、柿衛文庫「俳句ラボ」講師。
■太田うさぎ おおた・うさぎ
1963年東京生まれ。「豆の木」「雷魚」会員。「なんぢや」同人。現代俳句協会会員。共著に『俳コレ』(2011年、邑書林)。
■関悦史 せき・えつし
1969年、茨城生まれ。第1回芝不器男俳句新人賞城戸朱理奨励賞、第11回俳句界評論賞受賞。「豈」同人。共著『新撰21』(邑書林)。句集『六十億本の回転する曲がつた棒』(2011)にて第3回田中裕明賞を受賞。URL:http://etushinoheya.web.
■有川澄宏 ありかわ・すみひろ
1933年生まれ。「円座」所属。
■西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。ブログ「俳句的日常」 twitter
■上田信治 うえだ・しんじ
1961年生れ。共著『超新撰21』(2010)『虚子に学ぶ俳句365日』(2011)共編『俳コレ』(2012)ほか。
■福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「ku+」に参加。共著『俳コレ』。現在、マイナビブックス「ことばのかたち」 にて、「塔は崩れ去った」掲載中(更新終了)。■福田若之 ふくだ・わかゆき
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