後記 ● 村田 篠
いま、平山蘆江という人の書いた『蘆江怪談集』(昭和9年初版)を読んでいるのですが、ちょうど半分ぐらいまできて「宿外れで草鞋を穿代へながら、」という件を読んだとき、「あれ?」と目がとまりました。ページを遡ってみると、間違いなく最初から旧仮名遣いなのですが、そのことに気がつかずに(というか意識をせず)読んでいたのです。
日頃から旧仮名の俳句を作ったり読んだりしているから慣れてしまっているのか、と思いましたが、ほかの旧仮名遣いの本を引っ張り出して読んでみると、やはり、それなりに意識してしまいます。
『蘆江怪談集』の旧仮名遣いを意識しなかったのは、ひとつには、最近の復刊ということで新字体で組まれていることと、もうひとつは、文体がいま読んでも違和感がないほどにこなれていて、現代的だからなのだと思います。なにより読みやすい。ネット社会のなかで、文学作品の文体も大きく変化を遂げていますが、大正から昭和初期に書かれた蘆江の文章が、現代の人間にとっても非常に心地よいリズムと簡潔さを感じさせることは、驚きであり発見でした。
ですがやはり、どう眺めても一冊丸ごとの旧仮名遣いがまったく気にならないというのは、自分でも不思議です。俳句のおかげで旧仮名遣いに慣れているというのは、否定できないかもしれないですね。
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それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.440/2015-9-27 profile
■松本恭子 まつもと・きょうこ
長崎県生まれ。伊丹三樹彦に師事。「青玄」「吟遊」を経る。現代俳句協会会員。主な句集に『檸檬の街で』『夜の鹿』『花陰』(2015年/あざみエージェント)、俳句とエッセイ集に『二つのレモン』、エッセイ集に『ちぎれそうなりんごの皮の夜祭り』(2015年/あざみエージェント)、共著に『世紀末の竟宴』
■今井 聖 いまい・せい1950年生まれ。加藤楸邨に師事。「街」主宰。句集に「谷間の家具」「バーベルに月乗せて」など。脚本家として映画「エイジアンブルー」など。長編エッセイ『ライク・ア・ローリングス トーン』(岩波書店)、 『部活で俳句』(岩波ジュニア新書)など。「街」HP
■角谷昌子 かくたに・まさこ
東京在住。鍵和田柚子に師事。「未来図」同人。俳人協会幹事、国際俳句交流協会評議員、日本文芸家協会会員。詩誌「日本未来派」所属。句集に『奔流』『源流』。木島始との共著に『バイリンガル四行連詩集〈情熱の巻〉』、角川書店 『鑑賞 女性俳句の世界(5巻 井沢正江)』、俳人協会紀要「中村草田男 第 一句集『長子』の時代」ほか。目下、揚羽蝶の飼育に熱中。近所の井の頭公園散策が日課(井の頭バードリサーチ会員)。
■小野裕三 おの・ゆうぞう
1968年、大分県生まれ。神奈川県在住。「海程」所属、「豆の木」同人。現代俳句協会評論賞、現代俳句協会新人賞佳作、新潮新人賞(評論部門)最終候補など。句 集に『メキシコ料理店』(角川書店)、共著に『現代の俳人101』(金子兜太編・新書館)、『超新撰21』(邑書林)。サイト「ono-deluxe」
■阪西敦子 さかにし・あつこ
1984年より「ホトトギス」生徒・児童の部、1995年より「ホトトギス」雑詠、「円虹」へ投句。2008年より「ホトトギス」同人。合同句集「野分会2」、「新撰21」(作家小論執筆)。2010年、第二十一回日本伝統俳句協会新人賞受賞。
■畠 働猫 はた・どうみょう
1975年生まれ。北海道札幌市在住。自由律俳句集団「鉄塊」を中心とした活動を経て、現在「自由律句のひろば」在籍。
■近 恵 こん・けい
1964年生まれ。青森県出身。2007年俳句に足を踏み入れ「炎環」入会。同人。「豆の木」メンバー。2013年第31回現代俳句新人賞受賞。 合同句集「きざし」。
■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。「Belle Epoque」
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