【句集を読む】
スケールが引き起こすもの
矢野玲奈句集『森を離れて』の一句
西原天気
地球儀はつるりと丸し蝸牛 矢野玲奈
地球と比べて地球儀はたしかに「つるり」としているかもしれませんが、考えてみれば、地球の凹凸も地球の大きさからすれば、あってないようなものかもしれない。誰かが巨大な掌で地球をつかめば「つるり」としているかもしれません。
といったことは脇に置いておいて、「蝸牛」です。
上中までは、なんということもないことが述べられているのですが、下五で、がぜん興趣が増す。これは、どういうことかというと、つまり、こういうこと(↓↓↓)だと思いました。
地球と地球儀のスケールから、蝸牛の巨大化が連想され、すると、『ドリトル先生航海記』の、あの巨大カタツムリが現れ、さらには海底という地球の肌(の一部)をゆっくりと、はるかに旅する、あの地理と時間が現れる。
「蝸牛」が、この句の中で魔法を起こしているわけです(私の中で、というの話ですが)。
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