2016-05-15

〔今週号の表紙〕第473号 大落古利根川〈埼玉県春日部市〉 中嶋憲武

〔今週号の表紙〕
第473号 大落古利根川〈埼玉県春日部市〉

中嶋憲武



石寒太が楸邨に請われ、「寒雷」の編集を手伝い始めてから三、四年経った頃であろうか。「句集寒雷の初期作品を探る」という企画で、寒太は楸邨に随伴して春日部へ赴いた。

終日、古利根川畔を歩き回り、夜になってこの写真の辺りで、もの凄い牛蛙の声がした。この辺りは初夏になると頻繁に牛蛙の鳴くところである。寒太は「闇うごくときは蛙の鳴き袋」という一句を詠んだ。この句は第一句集「あるき神」に所収されていて、また「愛句遠景」という自句自解の本にも収められている。

楸邨と寒太は、春日部へ来ると時々は、この写真に見える新町橋を渡って、右側にある「島源」という鰻屋(うなぎの寝床のような白い建物がそれ。ここの鰻重は、濃い味付のたれと、少し焦げ目のある蒲焼きが特徴で、私の家では、よく出前を取っていた。鰻重というと島源の鰻重が原体験としてあるので、私にとっては、この鰻重がスタンダードである)にも寄ったようである。因みに三島の「「桜家」という鰻屋も楸邨御用達であった。

以上のような事を、当時春日部に住んでいたにも関わらず、俳句を始めてから知った。

楸邨と寒太が春日部の古利根川や小渕の観音院を探訪していた頃、私は小学生で古利根川畔の小渕に住んでいたので、何処かで二人とすれ違っていたかもしれなかった。



週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら

0 comments: