中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第35回 クリトリック・リス「バンドマンの女」
天気●去年後半ですかね、YouTubeで偶然見つけたんですが。
憲武●偶然ですね。僕も去年見ました。微妙なネーミングだなと思って。
天気●食えないけど夢を追い続けるバンドマンとその恋人の話。岡野泰輔さんに
音楽で食べようなんて思ふな蚊
という句があります。
憲武●面白いですね。蚊の力の抜け具合が面白い。
天気●「バンドマンの女」は対話を中心に曲が進行。バラッド(物語歌)になってて、ブレイクにエロネタが入る。PVはちょっと短編映画っぽい。
憲武●導入部からドラマ仕立てになってますね。あれ楽屋なんですかね、ライブハウスの。なんかシュールです。
天気●楽屋ですね。この曲は「楽屋もの」「バックステージもの」という範疇、ミュージシャンがミュージシャンの舞台裏を歌うという、ね。
憲武●手持ちカメラで撮影してるみたいですけど、女の子を追いかけて撮っているショット、あまりブレませんね。スタビライザーを使ってるのかな。ヌーヴェルバーグのように表現のテクニックとしてではなく、単に予算がないから手持ち撮影って感じですね。
天気●この人、ステージはずっとこの衣装、というかハダカ。私、お笑い芸人のハダカ芸には否定的で、どこがおもしろいのかわからないし、きらい。でも、この人のハダカは認めちゃうんですよね。一貫性のないことですが。ヘヴィメタとかの上半身ハダカはよくあるんですが、このノリのハダカって、意外になくて、ずっとがんばってほしいなって思うんです。
憲武●はい。
天気●電飾付きのパンツがふざけてる。バカげてる。そのふざけ方やバカさにに腰が入ってるっていうかね。
憲武●最初から履いていかずに、ステージで電飾付きパンツを履くってふざけすぎてます。そこでそれを履くかみたいな。
天気●勝負電飾なんですね。
憲武●この人の声って関西系の声質ですよね。鶴瓶、桂南光、板東英二などの声を彷彿とします。
天気●関西弁も相俟ってね。
憲武●ラストがね、二人で不必要なくらいハアハアしてて、電飾付きパンツのアップで終わるってところ、馬鹿馬鹿しくて好きです。
天気●ラスト、いいですよね。明快なオチや解決がない。まあ、みんな、息を切らしながら、必死でバカやって生きてくんですよね。
憲武●必死でバカやるって、なかなか出来ないことですよ。見栄や体裁が付きまといますからね。
天気●あ、そうそう。バンドマンものでは、「桐島バンドやめるってよ」もオススメ。それから生活感が色濃く滲むタイプでは、「陽の当たらぬ部屋」と「1989」が、バックトラックを含め、とてもいい。
憲武●「陽の当たらぬ部屋」の人形アニメ、不気味でいいですね。生活そのまま謳ってる訳じゃないでしょうけど、私小説ラップとでも言うんでしょうかね。
天気●きほん「泣き」「切なさ」ですね、この人は。それをそのまま歌うと、照れる、恥ずかしいので、ハダカと電飾パンツ。この含羞はひじょうによくわかります。
(最終回まで、あと966夜)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
2018-01-28
中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 第35回 クリトリック・リス「バンドマンの女」
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