中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第37回 エルヴィス・コステロ「Everyday I Write The Book」
天気●むかしね、エルヴィス・コステロって苦手だったんです。やってることがおもしろいのはわかってたんですが、声が、私にはダメだった。憲武さんは、どう?
憲武●ぼくも声がダメでした。聴いてませんでした。
天気●おお! おんなじだ。ご同輩。ところが、あるときね、ダメじゃなくなった。
憲武●ぼくも今は聴いてます。
天気●そこもおんなじですね。というわけで、今回は、どの曲でもいいんだけど、Everyday I Write The Book。
天気●声を聴いてどう感じるかは、生理的なものでしょう? だから、好きにも嫌いにも、理由はない。生理はずっと変わらないと思っていたんですが、あるとき、ころっと変わる。そのことにびっくりしたのです。
憲武●I wanna be lovedって曲のPV見てから聴くようになりましたですかね。
天気●なるほど。曲がきっかけだったのですね。
憲武●80年代の後半にポール・マッカートニーと共作を始めたでしょう?そんでその時にポールに、ヘフナーを再び弾くように勧めたんですよ。それですっかり気に入っちゃいまして。
天気●ところで、俳句も、好き・嫌い、としか言いようのないところもありますよね。理屈じゃなくて、こういう句は生理が受けつけない、というか。
憲武●ありますあります。
天気●でもね、ある日、ころっと、自分の好き嫌いが変わって、受けつけなかった句を気持ちよく、あるいは面白く感じるようになることがあるかもしれない。
憲武●心の中の何かを乗り越える瞬間ってありますよ。最近は、むかしは受けつけなかった句も、わりと楽しく読んでます。
天気●まあ、俳句に限らず、好き嫌いや趣味嗜好は、ある日、唐突に、変わっちゃう可能性があるんだな、と。そう思うと、ちょっと楽しいんですよね。
(最終回まで、あと964夜)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
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