【句集を読む】
その手足
日原傳『燕京』の二句
西原天気
句集を読んでいて、離れたページに収められた二句あるいは数句がセットになって心に残ることがある。
ざりがにの肘上げしまま流れけり 日原 傳
はんざきは手足幼きままに老ゆ 同
生き物の手足に着目。どちらの句も、「ああ、そうですね、そうですね」という納得感。俳句を論じるときの「発見」という語はあまり好きではないので(昨今よく言われるところのドヤ顔を想起させるし、きっと第一発見者でもない)、こんな場合、「ああ、これをすくい取ってくださいましたか、ありがとうございます」という感慨。
この手足、どちらもとてもかわいくて愛おしい。
集中、小さな生き物を詠んで、とても感じのいい句が他にも。
蝌蚪の押す木片やがて廻りだす 同
三匹の蟻の運べる骸かな 同
秋燕沙漠に影を流しけり 同
日原傳『燕京』(2017年9月/ふらんす堂)
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