【週俳2月の俳句を読む】
たかがビー玉されどビー玉
小久保佳世子
ビー玉を落として跳ねて鳥渡る 川嶋健佑
ビー玉はガラスだから落としたら割れることも。でもこのビー玉は割れることもなくボールのように跳ねて、もしかしたらそのまま鳥になった?郷愁のビー玉はもう戻ってこないのです。
二の腕が摘まめて泣けてきて無月 川嶋健佑
石内都「肌理と写真」展。舞踏家大野一雄の皮膚のアップは凸凹の地表のようでグロテスクすれすれの迫力でした。大野一雄の来し方の時間が生々しく残酷に美しく刻印されたモノクロの皮膚。かなり刺激的だったあの写真を掲句からふっと思い出しました。
万国旗ずたずたにして冬に入る 川嶋健佑
国旗はそれぞれの国の背景がデザイン化されているので深入りすると面倒な気配がありますが、カラフルな旗が連なって風に揺れている風景はただただ楽し気で好きです。誰がずたずたにしたのでしょうか。静かな抗議の句として読みました。
山眠り難民白い波に散る 川嶋健佑
「海は燃えているか~イタリア最南端の小さな島~」(ジャン・フランコロージ監督)。
海を渡って島にやってくる難民たちの悲劇と島の穏やかな暮しが隣り合って進行している様子を描いたドキュメンタリーですが、特にサムエルという男の子や島民たちの素朴なリリシズムが印象的で、それが難民の溺死者の陰惨な映像をより際立たせ胸に迫ってくる映画でした。
私たちも時代の悲劇と交わることなく俳句を書いていると思うことがありますが、この句はあのナレーションも無かったドキュメンタリー映画のように読者に解釈をゆだねているようです。
ビー玉を拾い集めてある平和 川嶋健佑
子供の頃無くしたあのビー玉を拾い集めているのでしょうか? 作者にとってビー玉は世の邪悪の真反対のものなのかもしれません。たかがビー玉されどビー玉の平和力。分かるような気がします。
2018-03-11
【週俳2月の俳句を読む】たかがビー玉されどビー玉 小久保佳世子
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