【週俳6月の俳句を読む】
黒いシミ
柴田千晶
髪に似て喪服褪せゆく水中花 小山玄黙
その人が生前最後に着た服がいつまでも壁に掛かっている。だれかの葬儀に着た喪服。そのうちに仕舞おうと思っていたのだろう。けれど、何年も喪服は吊られたまま。その人もそのうちに亡くなってしまった。
もうだれも住んでいない家の和箪笥の上に色褪せた水中花が置かれている。喪服は相変わらず壁に吊されたままだが、喪服から視線を下ろしてゆくと、腐りかけた畳の上に、人の形をした黒いシミのようなものがある。
その黒いシミを見下ろす喪服の肩のあたりに、長い髪が絡みついている。
「髪に似て」が異様です。だれにも看取られずに死んでしまった人の部屋を思い浮かべてしまいました。そういう部屋に水中花は似合います。
2018-07-22
【週俳6月の俳句を読む】黒いシミ 柴田千晶
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