空へゆく階段 №7 解題
対中いずみ
「俳句読者論」③である。この当時の文系の学生で哲学好きな人には、パスカル、アリストテレス、ガストン・パシュラールなど基礎教養的なものだったのだろうか。小林秀雄もよく読んでいたことと思われる。しかし、田中裕明は、専門は工学部電気系学科なのでかなりの理系ではある。
ちなみに、「静かな場所」3号では同人による座談会「『花間一壺』を読む」があり、そのなかで森賀まりさんが田中裕明の蔵書について語っている。一部を引用する。
今の家に全巻そろっているものは『西脇順三郎全集』『森有正全集』『河上徹太郎全集』『中島敦全集』『林達夫著作集』『魯迅選集』『花田清輝著作集』『潁原退藏著作集』『神谷美恵子著作集』『前田愛著作集』『ビブリオテカ澁澤龍彦』『埴谷雄高作品集』『フロイト著作集』『アラン著作集』『ウィトゲンシュタイン全集』『ニーチェ全集』『梶井基次郎全集』『中村草田男全集』『高浜虚子全集』『波多野爽波全集』。もちろんこれ以外にも蔵書は多いだろうが、〈悉く全集にあり衣被 裕明〉について語り合っていたときに、同人の和田悠さんの質問に答えたものなので、ここでは全集に焦点が当たっている。
端本では、『ハイデッガー選集』『ベルグソン全集』『ベンヤミン著作集』『ジンメル著作集』『朝永振一郎著作集』『芭蕉全集』『鴎外選集』『石川淳選集』『安東次男著作集』『森銑三著作集』『柳田國男全集』『吉田健一著作集』『折口信夫全集』『芥川龍之介全集』『正岡子規全集』『夏目漱石全集』。他にも大阪の実家にはあります。
ほかに全集ではないですが、フッサールとメルロ・ポンティとユングと唐木順三があります。
この頃つぎのような句が詠まれていた。
風吹いて大霜除に水の玉 田中裕明
冬山に土龍の齢たづねけり 同
煤の湯をもらひに傘をさしてゆく 同
≫田中裕明 雑詠鑑賞
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