【俳人インタビュー】
小野裕三さんへの10の質問
小野裕三さんへの10の質問
質問:西原天気
毎週ネット句会に参加していて、それが週に12句提出、と決まっているので、今週も12句作りました。
Q2 現在お住まいの町は、どんなところですか?
現在、短期の滞在でロンドンにいます。ロンドン市内の西のほうのアクトンというところで、特に何があるわけでもないのですが、静かな街です。頭にターバンを巻いたインド人(と思われる)が経営する食料品店が駅前にあって、そこでよく子連れで買い物をします。
Q3 きょう、朝起きてから2~3時間の行動をできるだけ詳しく(公表できる範囲で)教えてください。
今、ロンドンの王立芸術大学(RCA)というところに私はいるんですけど、今朝はちょっとした機会があって、数人の人たちを前に自分の俳句を読み上げてみました。日本語とその英訳を読み上げたのですが、彼らには意味がわからないはずなのに日本語の朗読が意外に受けがよくてびっくりしました。日本語って、決して音楽的な言語じゃないと思ってたんですけどね。それから昼に大学のカフェで食事していると、イギリス人女性の友人がやってきたので、少し雑談をしました。彼女は「人のオーラが見える」と公言しているアーティストで、聞いたら「幽霊もたくさん見るのよ」とか。「でもね、私なんかより、ほらあの背の高いスコット君っているじゃない? 彼なんて、幽体離脱(astral projection)するのよ」「ええ? ほんと?」「ほんとほんと」「じゃあ、彼は毎晩、体から抜け出してロンドンの空を飛び回ってるってこと?」「そうそう」−−みたいな奇妙な会話を延々としていました。
Q4 生まれ育った町は、どんなところですか?
大分県の南のほうにある町です。夏休みに子どもを連れて帰省すると、川遊びも海遊びもできて、大喜びします。「鳥籠に夜の位置あり魂迎」という私の句もこの町の実家で作りました。そんな雰囲気の町です。
Q5 触り心地が好きなものってありますか?
特にないのですが、今年の運勢占いに「触り心地のよいタオルを買え」とあったので、それは半信半疑で買ってみました。
Q6 10年後、どんなことをしていたいですか?
今いるところは芸術大学なので、世界中からアーティスト(とその卵)が集まっていて面白いところなのですが、彼らの思考や行動そして情熱は素晴らしいなあ、といつも感心しています。10年後に私自身がアーティストになる、という意味では全然ないのですが、彼らの思考や方式を取り入れた「何か」をやってみたいと思います。それが具体的に何なのか、十年先のことは明確にはわかりません。
Q7 目が覚めました。何十時間も眠ってしまったらしく、おなかがぺこぺこです。何を食べますか。
味噌汁。ロンドンでも味噌汁はほぼ毎日作ってます。ミソ・スープは偉大です。
Q8 どういうわけか、雄鶏を飼うことになりました。なんて名前を付けますか?
我が家に生き物が来た場合、間違いなくうちの子どもが名前をつけます。昨年うちにいたカマキリは「カマタロウ」でした。そのセンスからすると、雄鶏は「ニワタロウ」と推測します。
Q9 いま読んでいる本を教えてください。
最近は、イギリスで出版された詩集を買って読むのがわりと好きです。今読みつつあるのは Lavinia Greenlaw『Minsk』。タイトルに惹かれて買ってみました。
Q10 好きな自然現象について、教えてください。
好きなというか、詩としてのイメージが広がるなあと思うのは、雨です。もちろん、現実生活としてはせっかくの休日に雨が降ったりするのは嫌いです。あくまで、詩の対象としての雨が好きという意味です。自分の俳句にも、雨はよく登場しているような気がします。
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小野裕三・近作より自薦十句
調伏のよう春の扉をきちんと閉める
百年計画露草は雨降る単位
厭世的で雨のさなかの二月礼者
勇気その他ぜんぶ並べて山滴る
風の身体持ち試着室を覗く夏
骨董市に王様の首冬木立
旱星航海記濃く匂い立つ
ほぼ空の大きさである初詣
夏の浜雨の拙く降りにけり
凍土ひそひそひそケルト文明史
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