〔今週号の表紙〕
第627号 砂鉄
大江 進
砂浜のあちこちから湧水が噴出し、日本海に向かって短い小川を作り出している。鳥海山の西端にあたる釜磯という海岸。鳥海山・飛島ジオパークの有名なジオサイトの一つである。
そのまま飲んでも大丈夫なくらいに冷たく澄んだきれいな水なのだが、流れの底に鱗のような奇妙な黒い紋様がついている。これは砂に大量に含まれる鉄分(主に磁鉄鉱とチタン鉄鉱)が湧水の流れによって選別され凝縮してできた微地形である。
バタフライ効果という言葉を思い出す。砂の粒のサイズや形や比重のわずかな違いが時間とともに増幅してゆき、やがて人間の目にもはっきりとわかる大きな差異として現れる。そしてそれは止まることなく刻々とまた姿を変えていく。
けれども、海はすぐ近くにあるので、海が荒れると大波が砂浜全体を容赦なく洗う。湧水と砂鉄が作り出したみごとな絵もたちまちリセットされてしまう。
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