2019-04-07

空へゆく階段 №9 解題 対中いずみ

空へゆく階段 №9 解題

対中いずみ


「俳句読者論」④である。音楽、演劇、絵画と照らし合わせつつの俳句読者論だ。

ちなみにこの号の「青」の「選後に」という波多野爽波の文章に次のようなものがある。

三月の声を聞く頃ともなれば、私の許に送られてくる句稿には「水温む」という句が随分と沢山出てくるのだが、どうしたことか「水」に関わる言葉(もの)で詠われている句がまた実に多い。緋鯉だ、橋だ、舟だ、バケツだ、釣だなどと挙げ出したらキリのない程である。
句を作り始めて半年か一年ぐらいの方ならいざ識らず、三年、五年と俳句を作ってきてなお「水温む」という季題で「水」に関係のあるものを詠っているのでは些かがっかりさせられてしまう。

季題をいかに働かせて句を作るか。これは理論などではなくて日頃の体験の蓄積であろう。

季題が「ツキ過ぎ」であるほど味気ないものはない。

毎月、このような爽波の叱咤によって「青」のメンバーは鍛えられていた。

この号の裕明作品には以下のものがある。

襟巻を長く垂らして鹿のまへ

鳥の恋本の名を決めかねてゐる

桃の日の障子のまへに立てば開き


田中裕明 雑詠鑑賞

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