【句集を読む】
三月のカブトガニ
加藤知子『櫨の実の混沌より始む』の一句
西原天気
単身赴任カブトガニをつれ三月 加藤知子
4月からの配置転換でこれまでとは別の土地へと赴く。家族はそのまま残り、カブトガニだけが同行。
ペットとして飼うこともあるだろうから、現実のエピソードとして読める。それなら、このカブトガニ、いじらくて可憐。この人に唯一寄り添ってくれている。
一方、私たちがカジュアルに目にすることのない生物だけに、ちょっとした幻想味を帯びる。
現実、幻想のいずれにしても、動詞「つれ」に、彼/彼女の意思が宿り、景が毅然とする。
一句として、静かな小品映画のような味わい。
加藤知子『櫨の実の混沌より始む』2017年12月/ジャプラン
2019-08-04
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