空へゆく階段 №18 解題
対中いずみ
「ゆう」創刊号の選後評において、「俳句に対して真面目に向かいあいたいと思います」と言った。また、「新しい俳句ということを考えてゆきたい、新しい俳句を作ることによって新しい自分に出会いたい」とも言った。シンプルな言葉で、田中裕明の俳句観の芯を語っている。この言葉通りの俳誌運営だったと思う。
創刊号の裕明句は以下の通り。太字は句集収録句。
帰り花
秋の蝶ひとつふたつと軽くなる
たとへばコスモス花の好みを問はれれば
遠き人ゆつくり歩む芋の秋
稲架解きて柿の木蔭の濃かりけり
団栗につめたくありて昼の月(句集『先生から手紙』には〈つめたくありぬ〉)
木の瘤の腥くある時雨かな
一輪の火を焚きてある時雨かな
凍蝶のもどりのみちのうつろかな
帰り花隠れて棲むといふことは
青空も身も冷ゆるゆゑ帰り花
≫田中裕明 ゆうの言葉
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