2019-09-29

空へゆく階段 №18 解題 対中いずみ

空へゆく階段 №18 解題

対中いずみ


「ゆう」創刊号の選後評において、「俳句に対して真面目に向かいあいたいと思います」と言った。また、「新しい俳句ということを考えてゆきたい、新しい俳句を作ることによって新しい自分に出会いたい」とも言った。シンプルな言葉で、田中裕明の俳句観の芯を語っている。この言葉通りの俳誌運営だったと思う。

創刊号の裕明句は以下の通り。太字は句集収録句。

 帰り花

秋の蝶ひとつふたつと軽くなる

たとへばコスモス花の好みを問はれれば

遠き人ゆつくり歩む芋の秋

稲架解きて柿の木蔭の濃かりけり

団栗につめたくありて昼の月(句集『先生から手紙』には〈つめたくありぬ〉)

木の瘤の腥くある時雨かな

一輪の火を焚きてある時雨かな

凍蝶のもどりのみちのうつろかな

帰り花隠れて棲むといふことは

青空も身も冷ゆるゆゑ帰り花



田中裕明 ゆうの言葉

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