【句集を読む】
メタフィジカル・エッグ
青木澄江『薔薇果』の一句
西原天気
生みたての形而上学寒卵 青木澄江
形式としては「学」のうしろで切れるが、意味その他が断絶するわけではなく、切れの前後がイコールでつながるタイプ(それを切れと呼ぶかどうかは置いておく)。
鶏卵は、フィジカル(物理的・鶏にとって身体的)なものだが、あえてメタフィジカルとする。寒卵に、人間(日本人)の滋養にまつわる意味が付加されているから、形而上? というわけでもないはず。
ただ、「学」が付いているので、寒卵自体がフィジカルかメタフィジカルかが問題ではないのかもしれない。卵が雌鶏の尻からぽこっと落ちたそのとき、形而上学という学問が始まるのか?
と、まあ、そんなことよりも、「形而上学」(という見たこともない、見えるはずのないもの)が、目の前で、まるくてつるんとして、湯気が立つかのようにきっと温かい。それを想像すると、とても愉しいのですよ。
青木澄江句集『薔薇果(しょうびか)』2018年7月/角川文化振興財団
2019-10-27
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