中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
ベティ・ブー「where are you baby?」
憲武●踊れる俳人になりたければ、この一枚という事で、Betty Booで、"where are you baby?"
憲武●ベティ・ブープではなくて、ベティ・ブーです。「ブーマニア」というファースト・アルバムからの曲でした。1990年なんですけど、いまだに色褪せてない気がします。
天気●テクノっぽいヒップホップということでいえばトム・トム・クラブの1枚目(1981年)とほぼ同時期。トム・トム・クラブのようなオシャレ感は皆無なのに、なんかこっちの恥ずかしい部分を刺激してきますね。音とヴィジュアル両面にあふれんばかりの安物感バッタ物感(悪い意味ではない)がクセモノなのか。
憲武●まあ、ラップなんですが、60年代っぽいものが、背景にありますね。テレビでやってた「宇宙家族ロビンソン」とか、ジェーン・フォンダの「バーバレラ」とか思い出します。昔、夢みてた未来って、エロティシズムに彩られてたんですね。
天気●レトロ・フューチャーにもエロ要素はあるんですよね。いびつなものの醸し出すエロかも。宇宙服なのに髪型は60年代とか。テカテカ・ピカピカした肌理のフェティシズムの一方、粉吹いてるみたいに濃い化粧とか。
憲武●アルバムのライナーノーツに依りますと、「60'S大好き。でも特に誰かの影響を受けたってことはないわ。勝手にやって来たの。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド? 誰それ? 聴いたことないわ」と言い放ってしまう、ベティ・ブーことアリスン・クラークソンだからこそ、軽々と遊べてしまえるんですね。
天気●影響を受けるってのは、ひとつの素養ですからね。音楽的素養を感じさせないところもまた狙いなんでしょう。
憲武●ラジオの交通情報のBGMとか、使われそうな感じします。あまり、主張してないと言いますか。
天気●この頃のポップ、とりわけテクノは、メッセージ性を強くして高尚化するロックへの対抗でもあったんじゃないですか。
憲武●ううむ、卓見。つぎの曲もキュート。スクールものです。「グリース」とかの風味。
憲武●ついつい今でも、引っ張り出して来て、聴いちゃう一枚なんです。元気が出ます。
(最終回まで、あと883夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
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