■2019角川俳句賞「落選展」■ 3. 島村福助「噴水」

■2019角川俳句賞「落選展」■
3.  島村福助「噴水」

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噴水　　島村福助

冬景色人と歩いてゐた筈が
受精卵包むは宇宙クリスマス
路地裏の蛍光灯の初景色
メリーゴーラウンドですね初日の出
まづ句会やがて歌会初鴉
多喜二忌の俳句産まむとして呻く
空軍や否たんぽぽの絮盛り
雄猫の瞳を絞る菫かな
ゆきやなぎ苦悶と見えて来たりけり
天球の裏を見てゐる放哉忌
まうしろに御先祖が来る花見かな
黄蝶去りただの黄色が遊びをり
見えてゐる青空も花花曇
夕闇めさくらをほしいままに抱く
夜桜を見つつ足から消えゆかむ
迷宮に桜吹雪を幽閉す
愛と呼ぶ心身の襞八重桜
囀や朝の平和を 激戦区
心音の打ち合ふ我と春の山
目で追へば手を振つて去る春の川
山からは傷口に似る春の潮
そこだけが春恋人の向き合へば
鼻先に顔の香ぞする春の闇
宇宙にもぶらんこの在る夜明けかな
場外は霞まで飛べ草野球
うららかなあみめきりんのあみめかな
一部分河馬大部分春の水
逝く春を惜しまずパンダ横になる
進化して檻に飼はれてのどけしや
春燈に大阪の艶京の妖
乾坤を止めて牡丹が揺れてをり
花躑躅光合成をサボるほど
藤棚や空を見上ぐる魚類の目
やはらかなシャッターの街四月尽
パトカーだ速やかに去る初燕
地球史の緑の頁かしは餅
真つ青な地球が見ゆる鯉 幟
図書館に老境満てりこどもの日
子午線は弓万緑へ光の矢
ゆらぐのは世界の密度あげはてふ
太陽とビキニで飾る太陽と
見下ろせば世界など泡生ビール
流転して今噴水の途中かな
絶頂に来て噴水はやや悩む
噴水の上空へ又水中へ
緑蔭や巡り澄みゆく我が血潮
ここはまだバスティーユです巴里祭
被曝忌と詠まば無季なりいつまでも
沖縄を見ないで済ますサングラス
汗を噴く太陽系の円盤に
○