■2019角川俳句賞「落選展」■
6. 中田 剛「猫は飼はねど」
(一次予選通過作品)
クリックすると大きくなります
猫は飼はねど 中田 剛
女から生まれる男柏餅
羽ばたきてばかり歯痒し燕の子
新緑や百葉箱の移されて
はからずもなかぞらに折れ鯉幟
ベランダの方から悲鳴子供の日
まつはれるものをほどきて子供の日
梅雨に入る四阿はうち捨てられて
瓜人大先達と梅雨疎みたる
かたつむり其角は酒の肴とす
薄暑なり猫しばらくは水舐めて
寝返りをうちてもみせて毛虫かな
緑さす歌声喫茶しんかんと
緑さす京都は水の合はぬ地よ
向き向きに昼寝するなり赤ん坊
夏野菜ぶつきらぼうに売り買ひす
金魚鉢大波たたせみたりけり
水を打つ吝嗇な母そのむすめ
炎天下犬捕りは犬のみを追ひ
夏草やさすらひの猫目が据り
碑をでたらめ読みす爽やかに
俳諧の野卑愛すべし烏瓜
くたくたの背広で芭蕉忌を修す
衿と袖ごはごはにせり隙間風
葱抜きに出づあやふやな空模様
生真面目に戯けてみせて年忘
拡げたる翼引きずり初鴉
鬼やらひ土鳩すかさず豆突く
ばらばらに来て恋猫等つと坐る
隙あらば覆ひかぶさり恋猫は
拒まれて噛まれて猫の恋あはれ
てのひらの僅かな水に蝌蚪うごく
チューリップいつも明るくして居れど
黄砂降る旅の若きの頭陀袋
花見上ぐ日差しはあらく熱くとも
茹でたまご半分づつし桜愛づ
桜咲きほどなく忘れ人の恩
塗りたくるやうに囀りゐたりけり
上げし足降ろすの止めて子猫それ
握り飯だらだらと食ひ花疲れ
入学す椅子引ける音収まりて
輪唱のいささか乱れ長閑なる
春宵一刻香奠の文字ぞんざいな
花散るや幹を叩かば堰切りて
白藤に色めく蜂や刺されけり
春のくれ野良猫を撫で蔑まれ
今にして小町縁起や春も闌け
空に日のもどりぬ燕羽繕ふ
あきなはぬ時計鳴りだし夏に入る
ごきかぶり尻だけみせて夜を徹す
明易や排泄に起きだしてきて
○
0 comments:
コメントを投稿