週刊俳句2019年アンソロジー
40名40句
恐ろしく照つて脂の鰤切身 青山ゆりえ 第612号
黒人霊歌諸手で掴む冬の空 小西瞬夏 第613号
早起きやすでに割られてゐる氷 五十嵐筝曲 第616号
犬を野に不満の春をどうしよう 安田中彦 第620号
お庭えんぶりおんこを丸く刈り揃へ 広渡敬雄 第622号
花売って生きていけそう長電話 加藤綾那 第622号
うしろより耳朶透けてゆく春日かな 高勢祥子 第623号
手びねりの湯呑ぼつてり花粉症 金丸和代 第625号
春の蚊を殺めてタイの麺料理 常原拓 第626号
くびられて泡吹く赫いコカコーラ 佐藤りえ 第627号
椅子のない部屋が灯って鳥雲に 川嶋健佑 第628号
鹿の糞つややかにあり杉落葉 藤本夕衣 第629号
代掻きや足首にくる土の息 うにがわえりも 第631号
薔薇紅し大輪なるは俯き咲き 町田無鹿 第632号
船酔ひやディズニーシーの春夕焼 谷村行海 第634号
夕方が一番きれい麦の秋 津野利行 第635号
桜桃忌「どうにか、なる。」のなるのとこ 柳本々々 第635号
腹当や大人の死を詠み泥む 山根真矢 第636号
君は寝たのに紫陽花が鳴りやまぬ 岩瀬花恵 第637号
宙を欲る鯨に海は摶たれたり 神山刻 第638号
母もその母も金魚を死なせけり 瀬戸優理子 第639号
夕顔やしるしの雨をわかちあふ 楠本奇蹄 第640号
獏はいつ眠るのだろう夏の雨 菅原はなめ 第641号
白墨を舐めて無口な人の秋 倉田有希 第642号
弾痕は維新の名残蔦青葉 玉貴らら 第644号
大河往く黒蝶の遠きサイゴン 五十嵐秀彦 第645号
標本の鯨の眼窩夏の果 若林哲哉 第645号
同じ田に椋鳥同じ木に帰る クズウジュンイチ 第646号
足元にからまつてゐる秋思かな 鈴木健司 第648号
てのひらを懐しうする火もがな 田中惣一郎 第650号
茸獲るけ樵一刀の痕か 島田牙城 第650号
孔雀から梵字あふれて秋の風 青本瑞季 第651号
明け暮れの散らかる川を骨は葉に 青本柚紀 第651号
冬霧やスワンボートに囲まれて 井口可奈 第659号
子供にも旅荷ありけり石蕗の花 松本てふこ 第660号
神様がゐないみなとみらいライン 浅沼璞 第661号
重箱の底は開かなくなっている 樋口由紀子 第661号
凩も楽し自転車立漕ぎに 相子智恵 第661号
マスクして試用期間のあとすこし 岡田由季 第661号
推敲の果てに海鼠の句が残る 福田若之 第661号
(福田若之・謹撰)
2019-12-29
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