2019-12-29

【2019年週俳のオススメ記事 7月~9月】句集評がたくさん……上田信治

第637号から、歌人・小池純代さんの、月イチシリーズ、「七七七五の話」がはじまります。

七七七五は、都々逸の形式。シリーズは、たとえばマラルメや「詩経」の詩句を、都々逸形式に翻案しながら、十七音でも三十一音でもない「うた」を試しつつ遊びつつ、進んで行きます。必読。

同号に『今井杏太郎全句集』を読む会。西村麒麟、福田若之、小川楓子、生駒大祐、鴇田智哉による、この作家を考えつづけることの意思表明ともいうべき会の記録。

の「週俳6月の俳句を読む」。牟礼さんの〈鞄に犬静かな六月の電車 柳本々々〉が「詩経「六月」の詩句〈六月棲棲/戎車既飭〉を下敷きにしている」との指摘におどろく。

同じく柳元佑太さんの「時評に少し触れて」の、上田時評への擁護に感謝。

福田若之さん「〈文学的〉な問いを退けて──神野紗希の時評から考える」。神野紗希「俳句」2019年6月号の時評のジェンダー論から、論点をずらして拡散させてしまって、それでいいのか、という指摘。



「作者と語る『水界園丁』」生駒大祐×福田若之

今年のエポックと言っていい句集について、作者と、福田さんが語りあう。思ったんですけど、生駒さんは、今、俳壇屈指の「すごい顔」をしていると思う。あんな目をしてる俳人、同時代にいないですよ、もう。


中山奈々「溜まりて 対中いずみ句集『水瓶』第7回星野立子賞受賞祝賀会レポート」は、祝賀会の第一部、句集を〈語る〉会の記録で、仮屋賢一、青木亮人、津川絵理子の3人のスピーカーによる読み解きの詳細な記録。

対中いずみさんによる「空へゆく階段」(田中裕明の短文の拾遺とその解説)も、続いていて、われわれ後進のものに大変ありがたい。



には、上田信治「エスペラントの夢 俳句の批評は役に立つのか」。今年の夏から秋にかけて、自分は、ずいぶん文章を書きましたが、こんなことも考えていたという。

西原天気さんの「句集を読む」シリーズは「ふけとしこ『眠たい羊』の一句  首を打つ」。

いっけんすんなり見たままを詠んだようでいて、多声的(ポリフォニック)な仕掛けが凝らされて、愉快。

これはたいへん楽しませていただいた句集。


中島憲武さんの第0句集「祝日たちのために」の刊行を記念して「音楽千夜一夜」は、E・コステロの「Everyday I Write the Book」のカバーについて。最終回まで、あと892夜だそうです。



天気さんの「句集を読む」シリーズは、鈴木牛後さんの『にれかめる』の一句。この句集はほんとうに話題になりました。



上田の連続投稿、生駒大祐さんの「『水界園丁』の方法について(前編)プレテキストと複雑」

2019は『眠たい羊』『水界園丁』『楡の茂る頃とその前後』(藤田哲史)『星糞』(谷口智行)『朋哉句集 二』(若杉朋哉)と、他にもいろいろ出て、楽しかったです。



には、天気さんの、樋口由紀子『めるくまーる』津田ひびき『街騒』、雪我狂我『アラバマの月』それぞれよりの一句評。


には、上田の生駒句集評の後編「死と友情」。「通俗について」もそうなりましたが、1万字くらい書くと、言いたいこと言い切ったとなります。


柴田千晶さんの「歩けば異界⑦」は「別海」。北海道の道東に位置する町名。こんなところにまで行かれてるんですね。短いですが、ぞくりとさせます。必読もの。ラストに置かれた西川徹郎の句もまたよし。

「人間とはくだらないものだ、だがそのくださなさのどこが悪いのか」という声がどこかから聞こえてくる」は、小津夜景さんによる「小川軽舟句集『朝晩』」の評よりの一文。

なるほど、と思いました。







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