中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
ちあきなおみ「夜間飛行」
ちあきなおみ「夜間飛行」
天気●前回に続いて、ちあきなおみです。ほんといい歌手ですよね。カヴァーアルバム「港が見える丘」(1985年)は名盤中の名盤。アナログレコードでそれこそ擦り切れるくらい聴きました。でも、1曲を推すとなれば、カヴァーじゃなくて、これ。
天気●「夜間飛行」(1973年/吉田旺作詞、中村泰士作曲、高田弘編曲)。大ヒット曲「喝采」と同じ作詞・作曲・編曲で、その翌年のリリース。曲調はちょっと近いのですが、夜間飛行のほうが洒落てる感じがします。音も歌唱も。
憲武●「喝采」の次になんかあったと思うんですよね。うーんと、あっ、「劇場」って曲がありました。この曲も同じ作家です。なんか似てますよね。テイストが。
天気●前奏のストリングスの繰り返しフレーズが、なんだか離陸前とか低空飛行の感じ(街の灯が見える高度)がしてね。
憲武●そうですね。言われてみれば。その辺は計算してあるんでしょうかね。
天気●あと、間奏のギター(トレモロ・エフェクトが当時としても懐かしい)から、フランス語のナレーション。意味を調べると、「皆様、まもなくオルリーに到着いたします。パリの夜景をお楽しみください。当機をご利用いただきましてありがとうございます。よいご旅行を。ありがとうございます。さようなら」って、機内放送そのまま。なのに、なんだかじんわり来るのは、フランス語効果? 飛行機効果?
憲武●フランス語だけでも、かなりじんわり来ますけど、飛行機と相乗効果がありますね。ドラマチックになっちゃう。曲間のフランス語って、イエロー・マジック・オーケストラの「中国女」もそうですが、ドラマチックな感じを出しますね。
天気●前回憲武さんが推した「雨に濡れた慕情」。それから「夜へ急ぐ人」(1977年)。細川たかしよりもこっちが先の「矢切の渡し」(1976年)。そういった、いわば「和」の情緒を歌うのも巧いんですが、ちょっとハイカラな、でも懐かしい感じの「洋」もいいんですよね、ちあきなおみは。それがうまく生かされたのが最初に挙げたアルバム「港が見える丘」ともいえるのですが。
憲武●それ、聴いてないんですよね。ハイカラな、懐かしい感じの「洋」って、70年代特有なのではないかと。そんなにちょいと海外へ行ける時代じゃなかったですからね。兼高かおる見て、ただただ憧れていたような。
天気●引退(1992年)して久しいですが、ずっと愛聴されていく歌手なんでしょうね。私もこれから先、ときどき聴いてみるんだろうなあ。
(最終回まで、あと872夜)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
(次回は中嶋憲武の推薦曲)
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