2020-08-30

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 negicco「サンシャイン日本海」

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
negicco「サンシャイン日本海」

憲武●今年の夏は、長い長い梅雨が明けて一瞬の夏でしたので、まだまだ夏を楽しんでいたい気分もあります。という訳で negicco「サンシャイン日本海」(2014年)。


憲武●negicco(ネギッコ)は今年で結成17年めになる、新潟の女性アイドルグループです。いわばご当地アイドルの先駆け的存在でもあります。

天気●「圧倒的なスタイル」(2008年)が大好きで、それ以外はあまり聴いてなかったです。

憲武●そうでしたか。何かのテーマ曲でしたよね。ちょっとシカゴの「サタデイ・イン・ザ・パーク」を思わせます。この「サンシャイン日本海」、作詞作曲編曲プロデュースが、ORIGINAL LOVE(オリジナル・ラブ)の田島貴男です。

天気●オリジナル・ラブ版も聴いてみましたが、ネギッコのほうがいいですね。

憲武●そですね。アコースティックバージョンも大人しめでいいです。「サンシャイン日本海」、聴いてて飽きが来ないというか、何度でも聴けちゃうというか、いいんですよ。シンプルな歌詞、シンプルなメロディの威力ですかね。古き良きポップスの系譜と言ったら言い過ぎかもしれませんが。

天気●A→A'→B(サビ)という安心の構成のせいもあるかも。

憲武●なるほど。このMVの画像の処理も、露出がバシバシ変わったり、ハイキー調に飛んだり、8ミリ映画ふうに加工されていてノスタルジックです。フィルムの色調が、フジのシングル8は青味がかっていて、コダックのスーパー8は赤みがかる特徴があるんですが、この映像ではどちらもある。これを撮った人はきっと、昔8ミリをやってた人かもしれませんね。

天気●パキっとしたデジタル映像に慣れていると、ああ、こういうのだったなあ、プライヴェートな映像は、と。

憲武●フィルムに小さなゴミが付いてて、ポチボチ映ったりとかね。これは、そこまではやってないんですけどね。夏、女の子、海、8ミリというのは、8ミリ少年の永遠のテーマです。笹団子やポッポ焼き食べさせたり、浜辺でピョンピョンさせたり、泣けてくる既視感があるんです。いい意味で。

天気●じんわりします。

憲武●歌詞も、アイドルポップスの歌詞としては、ちょっと冒険してるところもあります。「信濃川ヨットハーバー ビール一杯だけ」とか「たくさん遊んでぐっすり眠るの 大好きなあなたと」とか、ドッキリしますよね。まあ恋人同士であれば普通のことなんですが、アイドルポップスという枠組みのなかでは、新鮮な感じです。

天気●信濃川! ご当地アイドルのアイデンティティに回帰ですね。

憲武●開放感こそ夏の真骨頂ですが、今年は開放感を存分に味わうことなく、夏が終わっていきそうです。心の底から楽しめないという気持ちが、どこかにいつもあるんですね。こういったMVを観て、せいぜい憂さ晴らしをする、そんな夏の終わりです。 


(最終回まで、あと841夜)
(次回は西原天気の推薦曲)

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