【句集を読む】
夜空に
北杜青『恭』の一句
西原天気
天心の窪みて朧月夜かな 北杜青
「て」は軽く切れるとされる。窪みと月とはちょっと引き離して読むべきかもしれないが、月が薄墨のなかに浮くでもなく沈むでもないあの朧月の有様、あれを「窪み」と呼ぶのは至極適切で巧みと思ってしまった。
掲句はしかし、朧月ではなく「朧月夜」と大きく捉える。そこが気持ちがいい。見立てやら喩の彩を超えて大きく、包み込むような景。天心もその高さでもって、広大に寄与する。
北杜青句集『恭(かたじけな)』2020年3月/邑書林
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