中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
小池玉緒「鏡の中の十月」
憲武●10月になりますと、毎年この曲を紹介しようかなと思いつつ、恥じらいもなく時は過ぎてしまい、今年になってしまいました。という訳で小池玉緒「鏡の中の十月」。
憲武●この曲、作詞が売野雅勇で、作曲・編曲がYMOです。1983年の作品ですね。雰囲気はミカドっぽい感じもないではない。というか作り手の思惑が明確に見えてます。
天気●この感じ、当時のヨーロッパによくありましたね。歌詞もそれっぽくて、文学的です。「アスピリンひとかけら♪」で始まる。なんか、いま聞くとこっちが気恥ずかしいくらいがんばってる。
憲武●途中、セリフが入るんですが、「鏡に唇あてて/傷つくほど優しく囁く/流れ星/宙(そら)の迷い子/生きてることも誰かの夢ね」と語ってます。恥ずかしい。小池玉緒という人、カネボウのCMなどに出ていたモデル出身の方ですね。当時、NHKで夕方放映されていた人形劇「三国志」のテーマも歌ってました。と言えばピンと来る方も多いかと。その時は朗々とした感じで歌ってましたが、一転この曲ではささやき系の歌い方してます。
天気●ぜんぜん知らない人でした。
憲武●えっ? そうでしたか。近年、「鏡の中の十月」のシングル盤が復刻されたようですが、c/wはフランス語バージョンです。
憲武●たどたどしいフランス語が可愛いって感じでしょうか。しかしA面の出来に比べると、いかにもついでな感じがアレですけど。
天気●フランス語、わからないですが、フランス語に聞こえない。不思議な歌唱。
憲武●日本語に聞こえたりしますね。さて、A面の曲、バッキングはもちろんYMOの方々が担当してまして、それぞれの担当部分がよくわかりますね。特に坂本龍一は、この時期、映画「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)の音楽を担当していて、その時のプロフェット5による音色(おんしょく)がそのまま使われている感じです。ちょっとセンチメンタルな音色。坂本龍一はこういうの、好きなんでしょうね。センチメンタル。
天気●プロフェット5、当時、170万円もしたんですね。すごい。いま中古はそれほどじゃないけど、かなり高値がついてるみたいです。
憲武●この曲、80年代後半に門あさ美のアルバムを、高橋幸宏がプロデュースの際に「退屈な二つの月」として、別の曲に生まれ変わります。いま、高橋幸宏は、脳腫瘍で闘病中です。隔世の感というのは、こういうとき言うんでしょうね。
(最終回まで、あと835夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
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