【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
青江三奈「池袋の夜」
憲武●先週が「モーニン」でしたので、繋がりのある青江三奈で「池袋の夜」です。
憲武●歌詞のなかでは「夜の池袋」と歌われているので、勘違いしてしまうんですが、タイトルは「池袋の夜」(1969)です。作詞は吉川静夫、作曲は渡久地政信です。
天気●「上海帰りのリル」を作曲した人ですね。
憲武●それ、知らんかっとんてんちんとんしゃん。「池袋の夜」、イントロのギターの音色が時代を感じさせます。
天気●ぽよんぽよんしています。
憲武●演歌の枠に収められてしまってますが、もともと青江三奈は60年代前半は、ジャズ歌手として銀座の高級クラブで歌っていたんです。スイング・ジャーナルの編集長だった岩浪洋三の記憶によれば、鈴原志麻と名乗っていたようです。
天気●テレビとかで観た衣装が銀座とかクラブとかキャバレーって感じでしたもんね。
憲武●ヘアスタイルとかですね。この曲、深作欣二の「仁義なき戦い 完結編」(1974)の中で、松方弘樹扮する市岡輝吉が駐車場で射殺されるシーンで、どこかの店から流れてる有線として、効果的に使われていました。夜の繁華街の雰囲気がよく出てたんです。
天気●その映画、未見です。
憲武●青江三奈といえば「伊勢佐木町ブルース」のせつないため息の人として、興味半分にずうっと注目してたんですが、1993年にニューヨークでマル・ウォルドロンらと共演した全曲英語のアルバム「The Shadow Of Love」で伊勢佐木町ブルースを「Bourbon Street Blues」として新録音していて、これが良かったんです。声質がヘレン・メリルと似ているんで、「you'd be so nice to come home to」も歌ってくれていたらよかったんですけどね。
天気●うん、ヘレン・メリルを聴いたとき、思いました。ジャケット写真の髪型もちょっと似てたし。
憲武●1995年に、ニューヨークのレインボー・ルームのライブを一部含むアルバムが出まして、このアルバムのオープニングとエンディングに「モーニン」が使用されてるんです。この二枚のアルバム、ジャケットの基調となる色が青と赤なので、僕は青江三奈の赤盤青盤と勝手に呼んでいます。二枚とも新宿のディスクユニオンで購入しました。
天気●ああ、やっぱりあるんですね。ジャズ曲のアルバム。
憲武●没後20年になりますが、you tubeなどの影響で、まだまだ忘れ去られた歌手とはなっていません。寒い日などに聴くとね、しみじみいいんですよ。
(最終回まで、あと827夜)
(次回は西原天気の推薦曲)
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