【空へゆく階段】№39 解題
対中いずみ
「ゆう」5号には、「漱石の夏やすみ」という田中裕明の小文が載っている。
高島俊男さんの近著『漱石の夏やすみ』を読んでいろいろと考えました。この本は夏目漱石が第一高等中学校の生徒だった夏休みに書いた『木屑録』という漢文紀行について書かれたものです。
高島さんは中国文学者です。その文章は漢字がすくなくて読みやすいのが見どころでしたが、この『漱石の夏やすみ』ではさらに進めて和語はほとんどかなで書いています。それがたいへん新鮮でした。
『木屑禄』という文章は、正岡子規というたった一人の読者を目あてに書かれました。高島さんは子規を『多少上っ調子なほど、陽気で快活な人であった。ひとにはむしろ、軽い、薄い、という感じをあたえるタイプである。』と評しています。これも新鮮です。
明治の一側面の伝わってくる本でした。
5号の裕明句は以下の通り。太字は句集収録句。
木と人と
白雲の迅く過ぎたる野焼かな
蘆原を焼くや大淀澄みわたり
書きかながら涙のわけり雪間草
磧(いしがはら)人去りて春来りけり
木と人と親しくありて春の風
眉白う白うに麥を踏みにけり
雛の間を覗けば人の寝てをりぬ
芝を焼くまでの日月いま焼けり
東風の妻幼きもののごとくなり
菜の花や三児をもちて眉うすく
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