【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
黛ジュン「天使の誘惑」
天気●夏といえば、この曲でしょうというわけで(どういうわけだ?)、黛ジュン「天使の誘惑」(1968年)です。ジャケットの強烈な立ち姿やら、名前の前のアステリスク「*」やら、黛とジュンのあいだに、なぜにナカグロ「・」が入るのかといったことは、とりあえず置いておいて、お聞きください。
天気●作詞なかにし礼、作曲と編曲が鈴木邦彦。鈴木邦彦は黛ジュンの初期のヒット曲のほか、奥村チヨ「恋の奴隷」など、1970年前後に売れっ子だった人です。
憲武●西城秀樹にも結構関わってたと思いますね。「薔薇の鎖」は結構好きです。
天気●注目するのはアレンジです。ドンドコリズムが南洋風(ラテンとはちょっと違う)で、ギターの音色がハワイアン風。即席カジュアルに「夏」の音作りになっています。
憲武●タヒチアンダンスでよく耳にする木製の打楽器も、印象的ですね。全編に渡って鳴り響いてます。
天気●で、すごく細かいんですが、1分10秒あたりから数秒のストリングス。よく聴いてくださいね。「恋の意味さえ♪」の直前。ストリングスがフェイドインとフェイドアウトを細かく重ねる。エコーとかとはまた違って、こんな変態的な処理、ほかで聴いたことなくて、吃驚しました。ヒットした当時じゃなくて、そののち中古のドーナツ盤を買って、自分の再生機で鳴らしたとき。
憲武●そうですね。今まであまり気にした事なかったんですが、確かに変な処理ですね。でも印象には残る。
天気●この曲、海の家のスピーカーから延々繰り返し流れていたような記憶があって、割れた音が風に流れる。
憲武●1968年の夏に友達たちとそのお母さん方で海水浴で、岩井へ行ったんですが、この「天使の誘惑」が海の家からほぼエンドレスで流れてて、今でもあの岩井海岸思い出しますね。みんなでスイカ割りとかやっちゃって。
天気●「あの夏」感が横溢してるんですよね。これ。
(最終回まで、あと798夜)
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