【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】ムーンライダーズ「夏の日のオーガズム」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】

ムーンライダーズ「夏の日のオーガズム」

憲武●すっかり夏本番といった感じの昨今です。個人的にはこの曲もいわゆる「あの夏」感があります。ムーンライダーズで「夏の日のオーガズム」。

 

憲武●「夏の日の」ってついたタイトルを冠する曲って、結構ありますよね。有名なのはパーシー・フェイスの「夏の日の恋」ですが、この曲の場合、「オーガズム」なので最初ちょっとドキッとしました。

天気●何を想像してるんですか？

憲武●えへへ…。この曲は作詞が鈴木慶一と弟の鈴木博文で、作曲がムーンライダーズです。1986年のデビュー10周年記念の一環の3曲入り12インチシングルとしてリリースされました。その中に収録されている「今すぐ君をぶっとばせ」もなかなかの出来です。歌詞に出てくる男が情けなくていいんです。

天気●知らない曲なので調べちゃいましたよ。「愛する私は、夜にはきっと泣くぞ。渋い私は、晩年にはもっと立派だ♪」って、ほんとだ。情けない。

憲武●武川雅寛のヴァイオリンの雰囲気が、後期ビートルズの感じあります。なんの曲ってはっきり言えませんが、漠然と「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のあの感じとか、「ブルー・ジェイ・ウェイ」のあの辺の雰囲気とか、そういった感じです。これじゃ、伝わってないかもしれませんね。すみません。

天気●ブリティッシュっぽい音ですよね。XTCとか、ちょっと思いました。

憲武●XTC入ってますよね。歌詞の作り方は、「きみ」に対して「ぼく」、「HELLO」に対して「SO LONG」というように対になるように出来てます。あと冒頭の「こんな娘とは」に対する「こんな言葉」というような韻も印象的です。

天気●「ことは」から「ことば」。なるほど。

憲武●一節めの「ハトを飼ってるんだぼく」っていうフレーズ、なかなか出てこないと思います。昔、近所にこういうお兄さん、いましたよね。レース鳩を飛ばしてるお兄さん。

天気●いましたいました。近所で。それで知られてるおにいさん。鳩って、懐かしい趣味ですよね。今でもいるのかな？

憲武●鳩が集団でぐるぐる旋回してる空って最近あまり見かけなくなったと思います。さておきオーガズムはやはり長く感じていたいものです。 

（最終回まで、あと797夜）