【空へゆく階段】№47 解題
対中いずみ
「晨」29号(1989年1月号)掲載。27号作品からの鑑賞である。さりげなく書かれていて「ことばの力を引き出す」「言葉を正確に用いてその響きがどれだけのことをするかをあらかじめ知っておくことが大切」、など、当時30歳の田中裕明が「言葉の力」についてセンシティブであったことが伺われる内容である。
この号には発表作品はない。それでは寂しいので宇佐美魚目の10句を。芳醇である。
遠浅の海に馬入れて露の玉
長き夜のかまきりの翅つかふとき
草に草さしかはしをり露の玉
栗筵その一隅を宝とし
鰭酒の酔か短冊書き散らし
露の玉白昼の月うごきをり
牡蠣飯や金泥に人入りしまま
その舟の伊勢へかまると秋の昼
奈良 二句
乾漆か木造か草冷えにけり
こほろぎや北円堂の濃き日向
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