【句集を読む】
一本の管
月犬『月犬句集 参 火の匂ひ/迷はぬ馬/マンドリン』の一句
西原天気
晩春の口笛として立つてゐる 月犬
俳句(というジャンル)が景色やありさま、あるいは動きや経緯を伝える(にとどまる)ものなら、この句は、晩春の時期、人が立って口笛を吹いている、ということになるのだろう。しかし、こう叙述されると、人体が一本の管となって、口笛(という現象)を生み出しているように感じてしまい、となると、晩春という語も、時間のもつ豊かな含蓄を伴って、句という出来事を、読者を包み込む。
いまさらですが、俳句はときどき不思議な感興を与えてくれるものだなあ、と。
月犬『月犬句集 参 火の匂ひ/迷はぬ馬/マンドリン』(2021年8月31日)は、A6判・蛇腹折りを3冊合わせて封入した私家版句集、その「参」。
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