【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】ザ・キンクス「モーターウェイ」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】

ザ・キンクス「モーターウェイ」

天気●バックステージ物（楽屋物）は映画などでお馴染みですが、音楽にもあって、バンドとか歌手の現実を歌ったのって、ときどきぐっと来るものがあります。

憲武●はい。たとえば？

天気●すぐ思いつくのは、レオン・ラッセルが「I've sung a lot of songs. I've made some bad rhymes♪」と歌う「Song for You」とかかな。でね、キンクスの2枚組アルバム「Everybody's in Show-Biz」（1972年）は、アルバム全体がバンドのドキュメンタリーになっているという点でユニーク。まずA面が英国から米国に渡ってツアーに明け暮れるというバンドの日常を歌い、最後はハリウッドのサンセット通りで往年の銀幕スターに思いを馳せる。で、ここから2枚目に移ってが感動的なのですが、ライブ録音なんです。実際のステージの模様になるという。で、今回は、そのライブからではなく、スタジオ得音の「Motorway」という曲を。

 

天気●ツアーのクルマ移動にもう飽き飽きだという曲で、ロンドンの下町から米国に来たら、そりゃそうだろうな、という。どっちも行ったことないんですけどね、はい、想像です。ごめんなさい。

憲武●のっけからニンマリしちゃう歌詞ですね。

天気●自動車道での食事は最悪、ってやつですね。

憲武●なんとなくジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」の中のセリフ、思い出してしまいます。

天気●おお、大好き映画。音的には、最初の和音、生ギターの響きが英国っぽくて、それからきほんカントリー的な曲調。途中のオルガンがこの時期のキンクスらしい。

憲武●1972年には、こういうサウンドありました。たしかに。日だまりの中を行くイメージです。

天気●ライブ部分は、得意のバーレスク調あり、ストレートなロックあり、おまけに「バナナボート」、あの浜村美智子で知られる（って、もう誰も知らないか？）ハリー・ベラフォンテの大有名カリプソの大合唱あり。2枚を通して楽しくて泣けるアルバムなので、興味のある人は是非、って感じです。 

（最終回まで、あと796夜）