2021-08-01

【空へゆく階段】№45 解題

対中いずみ



「晨」50号(1992年7月号)掲載。前年の十月に波多野爽波を亡くし、句会報「水無瀬野」を出しはじめたころの文章である。爽波の死去については一切触れていないが、あらためて師の作品を読み直しているのだろう。

この号の発表作品10句。

耕しの重たきもののとほりたる

濡れてゐる鶯なきし暗さなり

百年のはじめの桜咲きにけり

春雨の子どもがやむとゆうてやむ

春の橋人の重みに落ちにけり

八十八夜図鑑にめしひ魚のかほ

なほ重き八十八夜の手紙かな

麦笛を見てその音色かんがへる

卯月浪この雨もまたかろきかな

よく見れば卯波てふものなかりけり



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