2021-11-21

十句選  『ゴリラ』読書会 創刊号から5号

十句選
『ゴリラ』読書会 創刊号から5号


生駒大祐 選

秋風と犬もあるけば猫もあるく  原満三寿  創刊号
もうすこしいいにっぽんの草と天  谷佳紀  2号
わが顔の映ることあり撒水車来る  山口蛙鬼  2号
鮫跳ねるや洸洸として了はるや  毛呂篤   3号
踏切にあごのせ人間満喫する  猪鼻治男   3号
象の鼻の半径手紙まつしろ  多賀芳子  4号
蘭の花てのひらに家たちにけり  多賀芳子  4号
魂しい浮かれ猫も兎も細長い  谷佳紀  4号
時間つくるや空の隙間のブーメラン  谷佳紀  4号
よろこべり丘なす尻に雪がふり  原満三寿  4号


小川楓子 選

君が来てサーカスが降る大天才  谷佳紀  創刊号
簡易便所の水着少年刺身なり  谷佳紀  2号
すこし離れ胃や腸の中ゆく草笛  山口蛙鬼  2号
えんぴつでなく青草のびる故郷が  山口蛙鬼  2号
植木屋が光る多くさん光る多くさん  毛呂篤   3号
へんぽんと植物と毛のたのしさ  毛呂篤   3号
実に個人的なこと鈴虫爆破  毛呂篤   3号
霊柩車茶碗けちらしけちらし来  多賀芳子  4号
時間二つの木魂〱の乳房ゆれ  谷佳紀  4号
あれっあれっと吾子持ちきれず湯たんぽの海原  山口蛙鬼  4号


黒岩徳将 選

腹の底まで水は磁石だ詩は元気  谷佳紀  創刊号
すこし離れ胃や腸の中ゆく草笛  山口蛙鬼  2号
梟よ軍隊は泡立っています  毛呂篤  3号
パシャっと鵙壮年をして孤児と言わすか 安藤波津子  3号
象の鼻の半径手紙まつしろ  多賀芳子  4号
眼じゅう日本海なり花なり  中北綾子  4号
白盲の近江は紙いちまいの了り  毛呂篤  4号
大空気全力疾走が飛び出す  谷佳紀  4号
長生き婆ア鶏小屋を出て尿る  浅尾靖弘  5号
のどにつかえる港椿が落下した  猪鼻治男  5号


外山一機 選

火事冷えて初夏乱雲の洗いざらし  谷佳紀  創刊号
紺碧に舌裏暗い舌を出す  原満三寿  創刊号
あゝ春だブルドーザーが燐光す  猪鼻治男  2号
土嚢めく頭らしきともみづるよ  原満三寿  3号
竹叢を竹が出てゆく無辜の昼  多賀芳子  4号
大叔母や峠の朝の楠ありて  中北綾子  4号
頭傷んで小鳥とまらせ向日葵よ  山口蛙鬼  4号
ひとり寝のふとんよじれる嵐山  浅尾靖弘  5号
ほととぎす柱の傷のあたらしや  浅尾靖弘  5号
波を吐く私は鳥の中で揺れ  谷佳紀  5号


中矢温 選

森潜る厚葉神経きれさうな  原満三寿  創刊号
部屋の隅で笑顔はがすそれから笑う  原満三寿  創刊号
簡易便所の水着少年刺身なり  谷佳紀  2号
ヒロシマ・ナガサキ8は祷りの連関  安藤波津子  2号
肩すくめママンぼくらの舌噛まないで 原満三寿  2号
象の鼻の半径手紙まつしろ  多賀芳子  4号
洋梨のしずくに触れし指紋かな  中北綾子  4号
自刃とはよき語流砂に米沈む  高桑聰  4号
塩が酒肴放哉の痰臭いだす  原満三寿  4号
皮だけ赤い酢蛸を噛む二月廃鉱  浅尾靖弘  5号


中山奈々 選

鮒の血に少年二人触れて匂う  谷佳紀  2号
旅の途中の固まり易い時計見る  猪鼻治男  2号
野良犬は地を這うほかに色はなく  猪鼻治男  3号
割礼ほどの瓶の切口が寒い  原満三寿  3号
象の鼻の半径手紙まつしろ  多賀芳子  4号
椅子だけが大きい催眠剤いろいろ  中北綾子  4号
あれっあれっと吾子持ちきれず湯たんぽの海原 山口蛙鬼  4号
酔えば倒れ電柱の静かな捕虜  猪鼻治男  4号
ドリンク在庫美しく映え冬の浮浪  浅尾靖浩  5号
橇に盛る人参ふとき血族婚  高桑聰  5号


三世川浩司 選

君が来てサーカスが降る大天才  谷佳紀  創刊号
毛虫降る樹木のわいせつ心臓論  谷佳紀  2号
鮒の血に少年二人触れて匂う  谷佳紀  2号
すこし離れ胃や腸の中ゆく草笛  山口蛙鬼  2号
冷蔵庫覗く高度二万メートルのブイ  山口蛙鬼  2号
植木屋が光る多くさん光る多くさん  毛呂篤  3号
へんぽんと植物と毛のたのしさ  毛呂篤  3号
白盲の海よ一私人として泡か  毛呂篤  4号
朝日の鳥は血であり腐木の股に泡  谷佳紀  5号
鯨図鑑見なれ日の暮れ愛す空が  山口蛙鬼  5号


横井来季 選

模写すれば神煮くずれるパステル画  谷佳紀  創刊号
獣病んでからだほしがる緋の襤褸  原満三寿  創刊号
猫の屍の溶けつつ真空色の爪  谷佳紀  2号
肩すくめママンぼくらの舌噛まないで 原満三寿  2号
梟よ軍隊は泡立っています  毛呂篤  3号
蟷螂よ釦はずれていわせぬか  多賀芳子  4号
寒雷や胎芽のままのわが妹  森田浩一  4号
酔えばたおれ電柱の静かな捕虜  猪鼻治男  4号
島のいのちか毛蟹に細い雪明り  浅尾靖弘  5号
ザイル紡ぐ手負い山窩に雪ふるや  高桑聰  5号

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