2021-12-05

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】レ・ロマネスク「ズンドコ節」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
レ・ロマネスク「ズンドコ節」


天気●今回は「ズンドコ節」なんですが、氷川きよしじゃなくて、レ・ロマネスク。


天気●これ、2009年12月にフランスのスター誕生的な番組に出演したときのもので、当時、話題になったらしいのですが、私は、このコンビ、そのあとで知ったと思う。フランスで2000年結成だそうで、キャリア長いですね。

憲武●ええ、長いです。僕もあとで知りました。

天気●観客の反応は、ブーイングと喝采が同時に沸き起こるという、まあ、パフォーマンスとして最高の成果。

憲武●僕的にはこの方たち、ちょっとダメかもしれません。

天気●その「ダメ」な理由、興味があります。よかったら、教えてもらえません?

憲武●うーん、なんて言うんでしょう。この方たちのコスチュームとメイクには、当人たちの思い入れが籠もってるらしいんですが、テクスチャーが、いや、醸し出す雰囲気にキュートさが欠けているような気がするんです。

天気●なるほど。私が思うに、まず、根本はエグ味で、そこを通り抜けたキュートが、あるような、ないような。不思議なところが好感なんですよね。このあたりは、もう、個人の趣味の領域ですね。ただ、狙いがちょっと理屈っぽい感じはしますけどね。男性による男装の麗人ふう、女性によるドラァグクイーンふう。

憲武●そう、その理屈っぽいところが鼻につく感じです。これをこう表現するにはこういう扮装で、みたいな。この「ズンドコ節」はドリフターズのものを元にしてるみたいですね。合いの手がドリフの方は、ムード歌謡的な「パパヤ」なんですが。

天気●女性の合いの手「あいやー」は、暁伸とミスハワイっていう、あとは季語を付けるだけの七五の漫才コンビさんが出典になってる(ミスハワイがすでに夏な感じですけど)。

憲武●へーえ。ちーとも知りませんでした。「ズンドコ節」はオリジナルが「海軍小唄」なんですが、作者不詳のため、権利が発生しないので、いろいろにリメイク出来るみたいですね。事実さまざまなバージョンが存在します。

天気●こういう、振り切れていて、とはいえ適度に計算が見えるヘンな人って大好き。クイアーって、LGBT文脈で使われる語ですが、広く捉えて、風変わり・奇妙の尊称捉えたい。クイアーなものが世の中にもっと溢れてほしい。その点、俳句は、クイアー要素がまだまだ希薄で、ちょっと悲しくなります。 


(最終回まで、あと780夜)

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