【空へゆく階段】№60 解題
対中いずみ
「晨」44号(1991年7月号)掲載。文末にひょいと出てくる「渋柿をやれと食らへばというような句があったかと思うが」は、裕明特有のぼかしである。それをここに書き込むのも野暮なようだが、タイトルにもなっているので記しておく。
渋柿をやれと食らへば秋行きぬ 百鬼園
本号の発表作10句。
蜜豆の仏の家へ入らせたまへ
水音の武具飾る間はひそやかに
みちみちや片手につかむ鱧の皮
竹皮をぬいでたちまちひとりなる
鯛ひらめ泳ぐ眼前端午かな
深酒をつづけてけふの祭かな
傘させば人さだかなりあやめぐさ
亡き人の愛でてくれしは火蛾の句よ
つばくらはあやめもしらぬ巣立かな
真白な小さな小僧夏料理
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