2022-02-20

対中いずみ【空へゆく階段】№60 解題

【空へゆく階段】№60 解題

対中いずみ


「晨」44号(1991年7月号)掲載。文末にひょいと出てくる「渋柿をやれと食らへばというような句があったかと思うが」は、裕明特有のぼかしである。それをここに書き込むのも野暮なようだが、タイトルにもなっているので記しておく。

 渋柿をやれと食らへば秋行きぬ  百鬼園

本号の発表作10句。

蜜豆の仏の家へ入らせたまへ

水音の武具飾る間はひそやかに

みちみちや片手につかむ鱧の皮

竹皮をぬいでたちまちひとりなる

鯛ひらめ泳ぐ眼前端午かな

深酒をつづけてけふの祭かな

傘させば人さだかなりあやめぐさ

亡き人の愛でてくれしは火蛾の句よ

つばくらはあやめもしらぬ巣立かな

真白な小さな小僧夏料理


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