俳壇賞脳内選評会
千野千佳
「蒼海」第13号(2021年9月刊行)より転載
わたしは俳句の賞にいろいろとチャレンジしている。堀本裕樹先生に「千佳さんは俳壇賞が向いている。審査員の鳥居真里子氏が評価してくれるかもしれない」と言っていただいたので、喜び勇んで第35回俳壇賞に応募した(2020年9月末締切)。未発表30句だ。応募から約4ヶ月後。残念ながら予選通過すらできなかった。応募340編に対し、編集部による予選を通過するのが24編。そもそも予選通過がとてつもなく難しいのだ。
あらためて自らの応募作品を読み直し、脳内妄想選評会を開催してみることにした。審査員は井上弘美、佐怒賀正美、鳥居真里子、星野高士(敬称略)。(実際の俳壇賞の審査員の先生方だ)。
※以下、全てわたしの妄想です。
「駐車券」井上○佐怒賀○(2点)
井上 全体的におとなしい印象ですが、日常生活での発見を丁寧に掬い取っている句がよかったです。〈げんげ田に囲まれてゐる貸し倉庫〉こんなものでも俳句になるんだという発見。〈花の昼予防接種の体育館〉ノスタルジーを感じました。
佐怒賀 序盤と終盤につまらない作品が多かったね。作者だけで面白がっているような。〈ふらここを降りたり靴を傷つけて〉うーん。〈口元を隠す癖ある花見かな〉季語は花見じゃなくてもいい。でも中盤はちょっと元気な句がでてきて。〈オーナーがアロハシャツ着てあらはるる〉〈涼しさや立方体の島豆腐〉〈パイナップル尻を切られて直立す〉勢いがありました。
星野 沖縄にでも行ったのかな、この人。
鳥居 置きに行っている句が多い作品でした。失敗してもいいので、もっと冒険してほしかった。〈盆の月義兄が飲めば夫も飲む〉季語がただの説明。〈参道を犬すれちがふ黄落かな〉これはつまらない。
佐怒賀 〈冬くれば星野立子と試し書く〉これはいかがですか。
井上 星野さんへの挨拶句では。
星野 ちょっとわからなかったな(笑)あとタイトル「駐車券」って本人は面白がっているつもりだろうけど、詩情がないよ。
……先生方、本当にすみません。しかし第三者の目で作品に向き合えたことはよかった。わたしは一人で何をやっているのだろうとも思ったが、楽しい時間だった。まずは予選突破を目指して頑張りたい。
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