【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ヴォイシズ・オヴ・イースト・ハーレム「キャッシング・イン」
天気●ベースって、ロックやR&Bで、ドラムといっしょにリズムの根幹をつくり、ギターやキーボードといっしょにメロディー(コード進行)の土台をつくるってことで、最重要な楽器わわけで、なんでこんなしちめんどくさいことをゆってるかというと、こういう曲を聴くと、ああ、バンドや楽曲の推進力を担っているのは、まずもってベースなんだなということを実感するからなんですが……。ヴォイシズ・オヴ・イースト・ハーレム(The Voices Of East Harlem)の「Cashing In」(1973年)です。
天気●最初は曲全体を聴いて、それから2回目はベースだけ聴いてみてください。ぐいぐいずんずんずん、歌や全体の音を引っ張っていく感じ、しませんか?
憲武●そうですね。なかなかそういう聴き方したことなかったんですが、ベースが引っ張って行ってる感じ、あります。
天気●ベースを弾いてるのは、ジェリー・ジェモット(Jerry Jemmott)かチャック・レイニー(Chuck Rainey)のどっちか。曲ごとのクレジットがCDには書いてあるのかもしれませんが、いま見当たらなくて、「どっちか」としか言えない。まあ、どっちにしても、この時代のこの手の録音で大活躍したサポート奏者です。
憲武●どちらの人も、ロバータ・フラックのアルバムのクレジットにあります。チャック・レイニーはスティーリー・ダンにも参加してます。
天気●ヴォイシズ・オヴ・イースト・ハーレムは、ニューヨークのイーストハーレムで10代の子どもたちを集めてゴスペルをやろうという、まあ、治安の悪い地区で、一種の教育運動・浄化運動だったみたい。この曲が入っているのは3枚目のアルバムで、ゴスペルからもうちょっと幅を広げたソウル・ミュージックなかんじです。
憲武●カーティス・メイフィールドとリロイ・ハトソンがプロデュースしてるんですね。
天気●そうなんです。当時の大御所2人。売り出すのに力の入ってたんでしょうね。この曲は、日本編集のコンピレーション・アルバムとかにも入っているので、ヴォイシズ・オヴ・イースト・ハーレムは知らなくても、聴いたことがあるかもしれません。
憲武●90年代にフリー・ソウルっていうコンピのシリーズがあったじゃないですか。たまたま買ったものに「Cashing in」入ってました。ピチカート・ファイブのテイストを感じてグッと来たんですが、もちろん小西康陽がいいところを取り入れてたんでしょう。
天気●聴いていて体が動くと同時に、胸にも来る。気分が上がります。
(最終回まで、あと736夜)
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