【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ディープ・パープル「スピード・キング」
憲武●やはり触れずには置けないでしょう。大御所といってもいいかと思いますが、三月に来日も決定していますディープ・パープルで「スピード・キング」。
憲武●この曲は、1970年発表の「ディープ・パープル・イン・ロック」の冒頭1曲めです。グループとしては第2期と呼ばれる時代の幕開けですね。
天気●そうなんですね。じつはほとんど聴いたことがないんです、このバンド。若い頃はとくに、ハードロック、好きじゃなかったし、今も思い入れはないんです。
憲武●…そ、そうなんですか。このアルバムからハードロックのグループとなった訳です。それまでの3枚のアルバム、ライブ盤の「ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ」を加えると4枚ですが、ではサイケデリック路線、クラシックを取り入れたプログレッシブ路線を標榜していた、わりと地味めなグループといった印象でした。
天気●初期の頃はオルガンが目立つ音でしたが、どんどんギター中心になっていくその過渡期なんでしょうかね。
憲武●1枚めからのヒットの「ハッシュ」やアルバムのなかの「ヘルプ」、2枚めからのヒットの「ケンタッキー・ウーマン」などは、今でも頭の中に鳴る時があって、聴きたくなりますね。そういう時YouTube便利です。
天気●この頃はボーカリストがイアン・ギランじゃないこともあって、まるっきり別のバンドみたいです。
憲武●初期のボーカルはロッド・エヴァンスですね。ベースがニック・シンパー。そうなんです。別のバンドみたいなんです。この「スピード・キング」という曲、冒頭、ギターとキーボードの対立という感じで始まり、静かなキーボードの演奏のフェーダーが上がっていって、イアン・ギランの獰猛な歌唱へ移るタイミングが、何度聴いてもゾクゾクします。歌詞は、チャック・ベリーやエルヴィス・プレスリー、リトル・リチャードの曲から言葉を繋ぎ合わせて作られた、まあ、ロックによくある、よくわからない歌詞ですが、「青光りする家の中で、ロックしながら叫ぶ」は印象に残ってます。
天気●ボーカルもちょっと違いますね。ハイトーンの金属的な声とは違って、メタルっぽい。
憲武●ハイトーンの金属的な声? それはもしかするとデイヴィッド・カヴァデールかもしれませんね。「Burn」という曲を歌った。
天気●あ、そうかも。ぜんぜんわかっていない。
憲武●ボーカリストもくるくる変わりましたので。「イン・ロック」発表の頃は試行錯誤の時期だったんじゃないでしょうかね。おそるおそるハードな路線をやってみた、みたいな。しかしこのアルバムからハードロックからメタルへの流れが出来たといえる記念碑的作品だと思います。この曲の5:01あたりのイアン・ギランの不敵な笑いなどは、メタリカなどにも随分影響を与えたんじゃないでしょうか。
天気●細かいなあ(笑。
憲武●そうですか(笑。3月の来日公演では、正式なギタリストとなったサイモン・マクブライドがどんな演奏をするのか、楽しみではあります。
(最終回まで、あと723夜)
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