【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
デヴィッド・T・ウォーカー「With A Little Help From My Friends」
天気●突然ですが、ビートルズ曲のカヴァーを数回取り上げたいと思います。ビートルズのあの時代(って、えらいうざっくりですが)、英国に、スーパーなバンド、つまり人気があって、そののち長いキャリアを重ねるロックバンドがいくつかあったのですが、カヴァー頻度という点でも、ビートルズは図抜けていたんじゃないかと。例えば、ローリング・ストーンズにしてもレッド・ツェッペリンにしてクイーンにしても、コピーバンドはわんさか生まれましたが、コピーはカヴァーとは違う。いま挙げたバンドでさかんにカヴァーされた曲というのを思いつかない。
憲武●ありそうですけどね。うーん、ストーンズの「サティスファクション」ぐらいでしょうか。ブリトニー・スピアーズとかDEVO、オーティス・レディング、シーナ&ザ・ロケッツとか思い浮かびます。
天気●あんまりないでしょう? それに、似たような文脈(コンテクスト)でのカヴァー、つまりロックというかロックンロールというかR&Bというか、原曲のテイストから大きく離れたカヴァーではないわけで、ビートルズの曲は、新鮮に別の文脈に置かれたりする。やはり偉大なソングメイカー(こんな語、あるのか?)だったんだなと。で、今回、まず、リンゴ・スターがのほほんと唄った「With A Little Help From My Friends」。書いたのはレノン=マッカートニーですね。
天気●デヴィッド・T・ウォーカーはいっとう好きなギタリストです。1973年発売のビニール盤でこれを聴いたときの衝撃がすごかったんです。バラード風に歌心たっぷりに聞かせてから、一転、1分53秒あたりからですね、いわゆるカッティング、16ビートのファンクギターが始まります。
憲武●曲名を聞いてなかったら、これが「With A Little Help From My Friends」とはちょっと分かりかねるような感じですね。2分あたりで「あれ?もしかして」と、一瞬思いますかね。ラジオでかかって、ながら聞きしてたらちょっとわからないかも、です。
天気●よくあるチャカチャカ、ありはジャキジャキした刻み(strumming)ではなくて、プレイはメロー。なのに切れがある。音色は柔らかい。なのに芯がある。
憲武●あまり意識して聞いたことなかったんです。バックとかサイドにいる人って、イメージで。いや、カッコいいですね、驚きました。
天気●曲の後半はいろいろな管楽器のソロが入り乱れて、もう、どこが「With A Little Help From My Friends」なのかわかんなくなりますが、こういうジャム・セッション的な土台としても、ビートルズの曲は使えるんだということだと思います。
憲武●そうですね。使いたいと思わせるサムシングがあるんですね。
天気●やはりなんだかんだ言っても(誰も言ってないけど)、ビートルズは偉大です。
(最終回まで、あと720夜)
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