【解題】
「特別作品 涅槃西風」に寄せて
対中いずみ
対中いずみ
「晨」61号(1994年5月号)掲載。「晨」ではたまに特別作品として10句発表の機会があった。作品の下に掲載された小文である。
特別作品「涅槃西風」は以下の10句である。
さざなみの雪解の風のはじめかな
春の猫唐招提寺たもとほり
薬師寺はぬくしここらは春寒く
親指のことに末黒の匂ひかな
ものの芽のやうに相似て眠る顔
ものの芽に夜空さびしく流れけり
鳥の巣のありありと妻痩せにけり
鳥の巣やひとあつまれば火を焚きて
この世にもつとも小さき花に涅槃西風
水無瀬なる小さき雛を納めけり
(※「この世に」の句は、後に「この世で」に改められている)
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