【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
リック・ジェイムズ「Give it To Me Baby」
憲武●ファンク? フォンク? どちらでもよろしいんですが、ダンサブルということで、Rick Jamesで「Give it To Me Baby」。
憲武●冒頭のベースの響きから、引き込まれてしまいます。この曲は1981年発表の「STREET SONGS」に収録されています。内容は、「俺にアレをくれ」です。
天気●ラヴソング、というか、「口説く」内容の歌って、ソウル音楽でのシェアが、とんでもなく高い気がします。
憲武●そですね。このベースラインなんですが、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を思わせます。ロッド・テンパートンは、この曲を参考にしたんでしょうか。リック・ジェームスという人は、人が欲しくなるようなフレーズを、どんどん生み出しました。
天気●シンプルで、ツボを押さえてる感じですね。
憲武●「STREET SONGS」から、いろいろとサンプリングされてますね。最も有名なのは、MCハマーの一件でしょう。
天気●あ、知らない。なんか事件ですか?
憲武●1990年頃でしたでしょうか。黒人ラッパーのMCハマーが、「STREET SONGS」の中の「Super Freak」をサンプリングして、「U Can't Touch This」という曲を発表したんです。したっけこれが誰でも一度は聞いたことあるってくらい、大ヒットしちゃって、我が邦でも、MCハマーを真似した「ハマ男」なる人も出てきて、ちょっとした現象化だったんです。で、リック・ジェームスが訴えて勝訴したって顛末です。
天気●なるほど。
憲武●「Give it To Me Baby」ですが、この曲、ねっとりとした印象があって、なんかこうゾクゾク来る感じがあるんです。そこが魅力なんですが。
天気●憲武さんの官能に訴えるわけですね。
憲武●ビンビン来てます。リック・ジェームスは才能に恵まれながらも、ドラッグ、セックス、暴力に明け暮れして、56歳でこの世を去りました。2004年のことです。
天気●50代まで、そんなにも愉しみが多いなら、きっと本望でしょう。
憲武●私小説のような、この曲、その煌びやかさ、退廃、僕にとっては憧憬の一曲です。
(最終回まで、あと707夜)
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